サンタクロースは君だった
* * *

 1月も終わりかけた頃、突然レオから連絡が入った。

『もしもしひかりちゃん?』
「何かありましたか?あ、もしかしてシチュー、美味しくなかったとか…。」
『そんなわけないよ!ひかりちゃんが作ってくれたもので美味しくなかったものなんてないし。ってそうじゃなくて。…何かないと電話しちゃだめ?』

 電話越しの声が少し拗ねている。そんな声を可愛いと思ってしまうなんて、とてもじゃないが本人には言えない。

「そ、そんなこと…ごめんなさい。そういうつもりじゃ…。」
『ひかりちゃんの声、いつでも聞きたくって。あと仕事がひと段落したから、一緒に息抜きしたいなって。水曜日って仕事休みだよね?』
「休み…ですが。」
『映画、観に行かない?とある筋からチケットを貰ったのでタダです!』
「タダなのも申し訳ないですが…ちなみにタイトルは?」
『ひかりちゃんが観たがっていた『シークレットポイズン』です。』
「えっ!?行きたいです!」
『やった!時間だけは指定なんだけどそれでもいい?夜なんだ。』
「もちろんです。」
『じゃあ楽しみにしてるね。デートデート!』
「えっ…あのっ…はい…そ、そうですよね…これはデート…。」

 そう唱えるだけで頬が熱くなる。我ながら単純で、どうしようもない。

『うん!楽しもうね、ひかりちゃん。』
「…精一杯お洒落します。…頑張ります。」

 ひかりにはそれしか言えない。レオの隣にいても恥ずかしくないような服装を心掛けなくては。

『ひかりちゃん、いつも可愛いけど。でも僕のためにお洒落してくれるってすっごーく嬉しいかも。それも楽しみにしてるね。仕事、もうちょっと頑張れそう。』
「…ちゃんと食べて寝てくださいね。」
『うん。最近はちゃんと食べてるよ。ひかりちゃんのご飯、美味しいもん。』

 名残惜しくて、なかなか切れない。自分から電話する勇気などないから尚更だ。
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