サンタクロースは君だった
* * *

 その言葉を聞いた瞬間に走った衝撃は、シンガーソングライターとしての仕事を辞めると決意したときと同じものだった。あの時も決めるきっかけになったのはひかりの言葉で、そして今も自分をここまで嬉しくさせてくれる人をレオは他に知らない。

「…ひかりちゃんの方がずるいでしょ今のはさ…。」
「え?」

 首を傾げている。何を言っているのかわからない、といった顔だ。

「…曲を聴いただけで、ひかりちゃんには全部わかっちゃうんだもんなぁ…。」
「全部ってわけじゃ…。」
「まぁ、結構等身大でよかったからね、この曲は。」
「男の子の方はレオくんと年近いもんね。」
「うん。だから結構今の僕が入ってるよ。」

 結構、どころの騒ぎではない。ほとんど等身大の自分がいる。年上の自分よりもずっと仕事のできる、自立した女性を追いかける男の曲。BGMはラブコメに合わせて少しキャッチーなものにし、挿入歌はありったけの気持ちを込めた。歌詞は悩まなかった。

「好きだけど、今の自分じゃ手が届かなくて、でも手を伸ばしたくてもがくって今の僕にピッタリじゃない?」

 そうひかりに問いかけると、ひかりは顔を赤くしていた。

「お、実弥が出てくるよー?」

 きゃーという悲鳴が、実弥の登場を知らせる。

「成瀬実弥くんです。」
「よろしくお願いします。」

 爽やかな笑顔を浮かべている。営業用の成瀬実弥。本当はそんな風に笑うだけの奴じゃないことはちゃんと知っている。

「ひかりちゃんはきゃーとか言わないの?」
「え、えっと…いや、本物だなぁって。」
「あはは。なんだそれー?」

 ひかりらしい返事に思わず笑みが零れた。
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