サンタクロースは君だった
「さすがだなぁ、ひかりさん。まぁ、この仕事依頼したのは俺だから、俺の采配の腕が良かったんだけど。」
「素敵でした!演技の方も!」
「演技の方もって、俺はまるでオマケだなぁ。ひかりさんもなかなか言うね。」
「えっ?あ、あの…そうじゃ…。」

 オマケだなんて思っていない。どう考えたって主役は彼だ。

「…演技の方も素敵だったけど、ひかりさんにとってはレオの曲があっての俺の役だったわけだね。…はー…レオに音楽で喰われるなんて俺もまだまだだなー…。」
「そういうことだよ。今後は僕、フリーなんで仕事の依頼は早めにね。今回みたいなギリギリのスケジュールだときついから。」
「はいはい。売れっ子は大変ですねー。」
「売れっ子俳優よりは忙しくないです。」
「ってごめん、話していたいのは山々なんだけど、次の仕事があってさ。というわけで俺はそろそろ行くわ。またな、レオ。ひかりさんも。」

 実弥はひかりに思いっきりウインクした。

「もうすぐバレンタインだからね、ひかりさん。今日の映画が良かったーって思ってくれるんなら俺にも一つくれると嬉しいな。」
「はぁ!?ひかりちゃんがなんでお前なんかに…!」

 嵐のように言いたいことだけ言って、実弥は楽屋を後にした。ぽつんと取り残されたのはひかりとレオだけだ。

「…ば、バレンタイン…。」
「え、ひかりちゃんまさか…あいつにあげるの?」
「え…、あ、いや…あの…もしかしてレオくんも欲しいのかなって…。」
「くれるの!?」

 レオがぐいっと身を乗り出した。それにたじろいでしまう。

「…あの、欲しいんですか?」
「欲しいにきまってるよ!ひかりちゃんからだよ!?」

 即答だ。それならば。

「…今日のデートのお礼、します。」
「え?」
「バレンタイン、…準備しますね。」
「うんっ!楽しみにしてる!」

いつの間にか戻ってしまった敬語に気付かない程度には、2人ともそわそわしてしまっていた。
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