サンタクロースは君だった
* * *

「ひかりちゃん!」
「レオくん!」

 ひかりのことをマンションの下で待っていたらしいレオの口から、白い息が漏れる。レオの顔を見てどこかほっとした気持ちもあり、口元が自然と笑っていることに後から気付く。

「ひかりちゃん!顔真っ赤だよ!絶対熱ある!」
「な、ないよ…。」
「僕に嘘ついてもだめだよ。ほら。」
「!?」

 両頬を挟むようにレオの冷えた手が触れた。その冷たさが少し気持ちいいなんて、確かに身体は正直だ。

「もー!だから僕が行くって言ったのに!もう今日は帰さないからね!行くよひかりちゃん。」
「えっ…わ…!」

 チョコの袋を持っていない左手を、そっとレオの大きな手が包む。そしてそのまま、レオの部屋へと直行した。

「僕のベッドに寝てて。動いちゃだめ。あ、でもその前に手洗いうがいか。コート貸して?マフラーも。」
「あ、あのでも…私、うつしちゃ…。」
「湿度室温共にこの部屋、ちゃんと整えられてるから大丈夫。ひかりちゃんは僕の心配なんていらないから、早く寝て。」
「でもっ…そんな迷惑かけるわけには…。」
「…ひかりちゃんが風邪ひいて元気ない方が迷惑だよ。」
「え…?」

 ひかりの首からするりとマフラーを外し、コートのボタンを外しながらレオは続けた。

「ひかりちゃんが風邪ひいてたら、ご飯作りに来てってお願いできないし、デートにも誘えない。電話もできないし。僕にとっては何にもいいことないよ。だからね、ひかりちゃんは早くよくなってください。はい、腕抜いてー。」
「わっ!でも、お仕事は…?」
「締切明日じゃないし、大丈夫。っていうかほんと、ひかりちゃんは僕のことはいいんだよ。今は自分の心配する!洗面台にコップ、1個増やしておいたから使って?水色のやつ。」

 レオがマフラーとコートをハンガーにかけて吊るしに行く。上着を奪われては帰れない。ひかりは洗面所へ行き、コップを取った。

(綺麗な水色。…好きな色なんだよなぁ。)
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