サンタクロースは君だった
* * *

「だぁー…もう!」

 吐く息が白く染まる中、レオは顔の方を赤く染めていた。

「ひかりちゃん最強か…。」

 自分のスウェットを着てるというだけでも可愛いのに、顔は赤くて瞳はいつもよりも潤んでいて(絶対に熱のせいだけれども)、そしておまけに嫌じゃないときたものだ。いつも完全に屈服しているけれども、本当にひかりには敵いそうもない。

(…しかも、手作りのチョコ。)

 我慢しきれずに玄関先で開けた、ひかりからのチョコレート。それは明らかに既製品ではなかった。袋の中には小さなメッセージカードも入っていた。そこには、バランスの取れた綺麗な文字が並んでいた。

『いつの間にか、今までもたくさんお世話になっていました。そんな感謝の気持ちを込めて作りましたが…味はちょっと心配です。お口に合えば嬉しいです。』

 いつの間にか、今までも。
 それは冬木レオンのことを言っているのだろう。知らず知らずのうちに、ひかりは冬木レオンの曲を聴いてくれていた。それを知ったとき、どれだけ自分が嬉しかったか、いつかきちんと話したいと思っている。

「いつの間にか、僕の中でこんなにもひかりちゃんは大きくなってたんだなぁ。」

 離れがたさが、あの時も確かにあった。あれを最後にしたくないと思った。だからこそ自分から行動を起こすことができた。今の自分を作ったのは、確かにたくさんの人の力を借りたからに他ならないが、行動選択の前にも後にもひかりがいる。

「…ゼリー、ひかりちゃんは何味が好きなんだろ…。」

 思い出ばかりにすがるつもりもないけれど、確かに今の自分には何もなくて距離を縮めようがない。それでも少しずつひかりのことを知っていくことができることが、今はとても嬉しい。手の温もりも、柔らかい声も、笑顔も。少しずつ知りたい、知ってほしい。触れたい、そして触れてほしい。共有したい。まだひかりが知らないことを、いつか、でも遠くないうちに。
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