サンタクロースは君だった
* * *

 いつもとは違う香りに戸惑いを覚えながらも目を開けると、本当にそこは知らない場所だった。

「ん…ん…?」

 寝ぼけ眼をこすると、次第に周囲に焦点が合っていく。…ここはひかりの部屋ではない。

「…あれ、…待って。私あのまま寝て…。レオくん!」

 がばっと飛び起きて、ベッドを後にした。ドアを開けてリビングに向かうとコーヒーをすするレオがいた。

「あ、ひかりちゃん。もう体調大丈夫?」
「え…えっと私…昨日…。」
「熟睡だったよ。今日お休みで良かったね。ゆっくりしていって。」
「あの…わ、私ちゃんとチョコ…。」
「うん。いただきました。」

 コーヒーの隣に、チョコレートを入れた箱が置いてある。そこから一つをとって、レオは口に放り込んだ。

「2個め。…美味しいよ。」

 レオの笑顔に呼吸が苦しくなる。突然立ち上がったからなのか、少し立ちくらんで、壁に手をついた。

「ひかりちゃん!」
「…大丈夫。…あの、いつもと違う…感じだったから、びっくりして…あのまま寝ちゃってごめんなさい。レオくんの寝るとこ、取っちゃったし…。」
「大丈夫だよ。それよりぐっすり寝てくれて良かった。もしかして寝不足だった?」

 いつものひかりより寝不足ではあった。お菓子作りなんてめったにしないのに、今回は少し練習もしてしまったから。

「…ごめんね、我儘ばっかりで。これ作るのだって簡単じゃないのにね。」
「え…あ、違うの。これは全然負担じゃないっていうか…作りたくて、作ったもので。」

 謝ってもらうようなことじゃない。ひかりがしたくて、そうしたのだから。自己管理のなってなさが風邪を招いただけの話なのだから。

「…うん。ありがと。」

 レオがそっと、ひかりの両手を包み込んだ。朝の光の優しさと、その手の温かさが身体にしみる。

「…だからひかりちゃんが好きなんだ。」

 真っ直ぐな想いを真っ直ぐに受け取る勇気がいつだってない。今のひかりには目を逸らさないでいるだけで精一杯だ。
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