サンタクロースは君だった
* * *

「店長、最近何だか楽しそうですよね。」
「え?」
「あ、俺もそれ思ってたんですよ。」

 新人男子がひかりを見ていたずらっぽく笑った。

「あ、もしかして店長、彼氏できたんじゃないですか?」
「へっ!?」
「うわ、その反応本当っぽくないですか?」
「ち、違います!っていうか今仕事中だし、私語はだめです!」
「えぇー…だって店長、最近可愛くなったし、これは絶対男だって思ったのに!」
「大塚さん…めっちゃわかりますそれ。俺もそうかなって思ってました。」
「っ…!」

 触らなくてもひかりには痛いくらいにわかる。自分の頬が熱いこと、赤いこと。年相応の顔をしていないこと。

「…真っ赤じゃないですか、店長。」
「図星ですね、ひ・か・り・さん?」
「ちが…違うの、本当に、そういう…のではないというか。」
「じゃあ何なんです?なんでそんなに赤くなんなきゃいけないんですか?」

 思い出さないようにしていた彼の残り香。それを再び思い出しては、胸の奥がきゅっと苦しくなる。

「彼氏じゃないけど、好きな人?」

 頷く以外に、できない。

「きゃー!ひかりさんにもそんな人が…!」
「ひ、ひかりさんって呼ぶのやめて!仕事中だよ?」
「…そういうの、いいっすね。なんか、純粋に想われてるって感じで。」

 少し寂しそうに落ちた表情に、ひかりは戸惑った。

「お、何?遠藤くんは失恋でもした?」
「浮気されましたー。」
「え、う、浮気?」
「そうっす。まぁなんか薄々そうかなって思ってましたけど。だから、店長みたいに純粋な感じで想われてるのいいなって。」

 自分が今まで知らなかった、『恋』という世界。それにもきっと、様々な色がある。今実っているものも、今枯れてしまったものもあるのかもしれない。

「…想ってる、だけで、何もできないんだけどね。」
「まずは想う、それが一番大切です。そんな気がしました、俺。」

 年下の子に諭される、不思議な誕生日だ。
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