サンタクロースは君だった
* * *

「「いただきます。」」

 ほかほかの炊き込みご飯に優しい味の茶碗蒸し。この一つ一つをレオが作ってくれたのかと思うと、もうそれだけで人生で一番幸せな誕生日なのではと思ってしまう。

「美味しい?大丈夫?」
「うん。すごく美味しい!レオくん、また腕上げたね。」
「そう?そう言ってもらえてよかった!僕としてはひかりちゃんの味付けの方が好きなんだけど…なかなかひかりちゃんの味が出せない…。」
「え、いいのに!私はレオくんの味の方が好きだなぁ。」
「そっか。…うん、嬉しい。」

 穏やかな食事。二人でこうして食卓を囲むことが増え、味がよりわかるようになった。誰かが美味しいと言って食べてくれること、誰かが作ってくれたものを美味しいと言って食べること。生きる基礎が、今はちゃんとあること。とても優しい時間が流れるレオとの食事の時間が、ひかりはとても好きだ。
 レオと一緒にいると、好きなものが増えていく。そして何より、レオ自身を好きになる。

(…もう、バレていてもおかしくない気がする…。レオくん、鋭いもんなぁ…。)

 レオに隠し事は、きっとできない。ちょっとした、自分でも気付かないような変化をレオは敏感にキャッチしてしまうからだ。自分はというと、レオの変化には気付けないことも多いというのに。

「さて、ひかりちゃん。ケーキにしますか、それともプレゼントにしますか。」
「え?プレゼントもあるの?」
「あるよ!え?むしろないと思ってたの?あるよ!絶対あるからね!」
「ご、ごめん。いやあの…ご飯作ってもらっただけで充分っていうか…充分プレゼントだから。」
「甘いよひかりちゃん!じゃあプレゼントから先に渡すね。ソファーに座ってて。持ってくるから。」
「う、うん。」

 迎えに来てもらって、ご飯まで作ってもらって、ケーキも用意してくれて。そしておまけにプレゼントまで。こんなに盛り沢山な誕生日は何年ぶりだろう。

「ひかりちゃん、誕生日おめでとう。そして、今日一緒に過ごす相手に僕を選んでくれてありがとう。」

 差し出された、小さな袋。

「開けても、いいの?」
「もちろん。何なら今、つけてあげるよ。」
「つける?」
「うん。」

 袋を開けると、小箱がある。その小箱にはダイヤの形で、中央にはキュービックジルコニアが埋め込まれたピアスが入っていた。色は春に合う、柔らかなピンク。

「これっ…。」
「ひかりちゃんに似合いそうだなって。そして実はこれ…。」

 レオがそっと、耳にかかっていた自分の髪をかき上げた。
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