サンタクロースは君だった
* * *

 冬木レオンの衝撃の芸能界引退からもう5ヶ月。同棲生活も1ヶ月を何事もなく終え、特に喧嘩もない穏やかな生活が続いていた。

「レオくん、お昼何食べたい?」
「んー…パスタ?」
「冷凍のシーフードのやつあった気が…。あった!じゃあ魚介のクリームパスタにしよう。」
「なにそれ美味しそう…。手伝った方がいい?」
「ううん。昨日が締め切りのお仕事、あったんだよね?顔が疲れてるよ。」
「…ごめん。睡眠って大事だね。」

 どさっと、レオにしては珍しく重い音を立ててソファーに座り込んだ。そのまま眠ってしまうのではというくらいにはラフな格好かつ所々に寝癖がある。
 ひかりの誕生日に撮った写真が次の日には現像され、リビングにあるテレビの横に置いてあるフォトフレームに収まっている。早いもので誕生日から1ヶ月が経った。相変わらず、勇気を出せないままずるずるとレオに甘える日々が続いている。

「何か飲む?コーヒーがいいかな?」
「…うん、もらおうかな。」
「ちょっと待っててね。」

 お湯を沸かしながら、パスタソースを作る。レオの食の好みも少しずつ覚えてきた。何かと自分が優先されてしまい、なかなかレオの好みがわからなかったが、レオの仕事が忙しくなるにつれてレオの方にもゆとりがなくなり、こうしてふとした瞬間にレオの素の姿を見れることも増えた。
 芸能界を引退したというのに、レオのもとにはひっきりなしに仕事が舞い込んでいるようだった。それも、それほどまでに人を惹きつける曲が書けるからこそだろう。

「はい、お待たせ。」
「ん。ありがとう。」

 コーヒーを一口、レオがすすった。そしてひかりを見て、優しく微笑む。

「え?ど、どうかした?」
「ううん。」

 ゆっくりと伸びてきたレオの手が、ひかりの耳たぶに触れた。

「っ…レオ…くん?」
「休みが被ったとき、絶対これつけてくれてるから…嬉しいなって。」
「そ…そんなこと…!」
「ひかりちゃんはいつも、当たり前みたいに僕が嬉しいことしてくれるんだよね。」

 窓から差し込む日の光が優しく降り注ぐ。ひかりの目はこんな時も、どうしたって泳いでしまう。
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