サンタクロースは君だった
* * *
学校は嫌いだった。母親がドイツ人だったレオの髪の色、目の色は確かに日本人のものとは違っていて、それが昔は大嫌いだった。普通でありたくて、友達がほしかった。しかし、他人とは違う自分はいじめの標的になった。
その日も転ばされ、ズボンは泥まみれで穴まで開いていた。10歳で穴が開くほど盛大に転ぶほど、どんくさくはないことも両親は知っている。だからこそ、言い訳を考えることも苦しかった。
いじめられていると告白する勇気もなかった。そんな弱い自分を晒すことはできなかった。そして、いじめられているのは自分が間違っているからだと思っていた。
誰もいない家に帰宅し、誰もいない公園で時間を潰すのが日課になっていた。歌うことは好きだったけれど、家で歌うことはなかった。どこからともなく溢れてくるメロディで頭の中がいっぱいになる。そしてそれを、特に歌詞もつけずに歌う。一日のうちの、唯一心穏やかでいられる時間。
「歌が上手なんだね。」
「!?」
顔を上げた先にいたのは、制服を着た、自分よりもはるかに背の高い女の子だった。髪が風に靡き、それと同時に優しい匂いがした。
「ドロドロ!どうしたの?膝も擦りむいてるし。」
「な、なんでもない!さわるな!」
伸びてきた手を、払いのけた。誰かに知られるわけにはいかない。
「…ごめんね、いきなり。でも…痛そうだし、手当させてもらえないかな。私の家、近くなの。すぐに絆創膏とか持ってこれるし。ちょっと待っててね。」
そんなのいらない、と突っぱねるつもりだったのにそれができなかった。そして本当に5分もしないうちに戻ってきた。
「まずは洗おう。って言ってもじゃぶじゃぶ洗えないから…あ、ちょっと待ってて。」
制服のポケットから出したハンカチを濡らし、傷にあてた。ちくっと沁みたがそこは我慢した。
「絆創膏。とりあえずね。」
この町に来て、初めてこんなにも優しくされた。自分に対して優しい人間がいたことに驚いた。
学校は嫌いだった。母親がドイツ人だったレオの髪の色、目の色は確かに日本人のものとは違っていて、それが昔は大嫌いだった。普通でありたくて、友達がほしかった。しかし、他人とは違う自分はいじめの標的になった。
その日も転ばされ、ズボンは泥まみれで穴まで開いていた。10歳で穴が開くほど盛大に転ぶほど、どんくさくはないことも両親は知っている。だからこそ、言い訳を考えることも苦しかった。
いじめられていると告白する勇気もなかった。そんな弱い自分を晒すことはできなかった。そして、いじめられているのは自分が間違っているからだと思っていた。
誰もいない家に帰宅し、誰もいない公園で時間を潰すのが日課になっていた。歌うことは好きだったけれど、家で歌うことはなかった。どこからともなく溢れてくるメロディで頭の中がいっぱいになる。そしてそれを、特に歌詞もつけずに歌う。一日のうちの、唯一心穏やかでいられる時間。
「歌が上手なんだね。」
「!?」
顔を上げた先にいたのは、制服を着た、自分よりもはるかに背の高い女の子だった。髪が風に靡き、それと同時に優しい匂いがした。
「ドロドロ!どうしたの?膝も擦りむいてるし。」
「な、なんでもない!さわるな!」
伸びてきた手を、払いのけた。誰かに知られるわけにはいかない。
「…ごめんね、いきなり。でも…痛そうだし、手当させてもらえないかな。私の家、近くなの。すぐに絆創膏とか持ってこれるし。ちょっと待っててね。」
そんなのいらない、と突っぱねるつもりだったのにそれができなかった。そして本当に5分もしないうちに戻ってきた。
「まずは洗おう。って言ってもじゃぶじゃぶ洗えないから…あ、ちょっと待ってて。」
制服のポケットから出したハンカチを濡らし、傷にあてた。ちくっと沁みたがそこは我慢した。
「絆創膏。とりあえずね。」
この町に来て、初めてこんなにも優しくされた。自分に対して優しい人間がいたことに驚いた。