サンタクロースは君だった

「顔も結構傷が多いんだね。怪我しやすいの？」
「…そんなんじゃない。」
「そうだよね。なんか、運動できそうな感じがするもん。」

　掛けられる言葉の一つ一つにとげがない。刺そうという意思を感じない。そのことに涙が出そうだった。

「っ…。」

　鼻の奥が痛かった。じわっと滲む視界が憎い。初めて出会った女の前で泣く自分が情けなかった。泣くようなことなんて、なかったはずだ。ないことにしていたはずなのに。

「…何があったか、よくわかんないけど。痛かったね、色々。」

　頭に軽く乗った、柔らかい手。それがくしゃっと頭を撫でた。その優しさに自分の中のストッパーが壊れたことを感じた。そして衝動に任せて、彼女の胸に飛び込んだ。
　泣いた。涙がこれでもかと出てきて止まらなかった。この服汚していいのかとか、いろんなことを思ったけれど、そんなことを思ったところで涙は止まってくれなかった。
　何があったかわからないと言った彼女はきっと、多分何が起こっていたのか知っていた、気付いていた。だからこそこうして、突然泣き始めた小学生を慰めてくれたのだと、振り返ればわかる。
　背中に回った手が、ポンポンと子供をあやすようにリズムを奏でた。このリズムは嫌じゃなかった。子供扱いするなとか、そんなことは思わなかった。むしろ、こうしていてほしいと思った。


　これが、ひかりとの出会いだった。レオを救った、優しさだった。


「…ねぇ、良かったら名前を教えてくれないかな。」
「レオ。」
「レオくん、かぁ。私はひかり。美潮ひかりっていいます。よろしくね。」
「……。」
「今度はもうちょっと長く、歌を聴かせてね。」