サンタクロースは君だった
6.3

『さて、先日の放送予告どおり、本日は冬木レオンさんにお越しいただいております。』
『お騒がせして申し訳ありません。冬木です。今日はよろしくお願いします。』

 ひかりは休みを代わってもらって、家のリビングでテレビを見つめていた。

『じゃあ、突っ込んだ質問してもいいですかね。』
『もちろんです。僕に関する質問でしたら全てお答えします。』
「レオくん…ちょっと痩せた…。」

『ズバリ、あの記事の本当の部分とは?』
『そうですね。一緒に住んでいる女性がいるということは本当です。先日お話しした通り、一般の方です。ですが、今回出された記事で本当のことはこれくらいなもので、他は全て嘘なんですよ。』
『嘘…なんですか?あの、結婚秒読みとか、芸能界引退の理由とか…。』
『全て嘘です。一緒には住んでいますが正式には付き合っていません。僕の長年の片想いに応えて、彼女は一緒に住んでくれているんです。今は僕を知ろうと、そして僕も彼女を知ろうとしている期間、という感じです。なので結婚秒読みどころか、付き合ってもいませんとしか…僕には言えないですね。』
『付き合ってないのに同棲って…なかなかぶっ飛んでますよね。』
『はは、そうですね。でも、僕も彼女もお互いの家を行き来する暇もないくらい忙しくて。でもお互いを知りたいなとは思っていて。だから、一緒に住んじゃおうかって僕から提案しました。彼女は悩んでいましたが、頷いてくれたんです。…とにかく、僕の片想いです。まだまだ、片想いですよ。』
『では、芸能界引退の理由と彼女は関係ない、ということですか。』
『全く関係ないとは言えません。ですが、彼女のせいで歌うのをやめた、という書き方をされると嘘になります。』
『というと?』
『心が歌にはなくなってしまったのに歌い続けることができない、と判断したから僕は制作側に回ろうと思ったというのが、一番近いような気がします。』
『歌に心が…ですか。』
『はい。僕の曲には、彼女しかいません。』

 ひかりの目から、涙が零れ落ちた。
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