サンタクロースは君だった
『彼女は、10年前に僕をどん底から救ってくれた人なんです。そんな彼女とは僕の両親の離婚が理由で会えなくなってしまった。それでも、僕はどうしても彼女に会いたくて、小さい頃からずっと好きだった歌を極めようと思いました。彼女は10年前、僕のどうしようもない歌をたくさん褒めてくれたんです。』
『…僕、結構冬木さんのファンで、インタビューとか読んでる方なんですけど、こういう話されるの初めてじゃないですか。』
『あぁ、そうかもしれませんね。いつも楽曲のことは話せますが、僕自身のことって聞かれても曖昧に濁しちゃってて。でも、こうやって話すって決めてから挑むと話せちゃうもんですね。』
『あ、ごめんなさい、話の腰折っちゃって。どうぞ。』
『ありがとうございます。あ、出会いの話ですよね。褒めてくれて、だから僕は自分のことで唯一声と歌だけは好きになれたんです。日本人とは少し違う見た目も今は受け入れてくれる人がたくさんいますが、当時はそうじゃなかった。だからこそ余計に僕は、音楽を好きになったんだと思います。だから今の僕が生まれました。』
『つまり、シンガーソングライター冬木レオンを生んだのは、その彼女だったと。』
『そうですね。彼女があの時、僕の歌をたくさん聴いてくれたから、笑ってくれたから、僕は音楽で勝負がしたくなったんだと思います。そして歌でいつか有名になったら会えるかもしれないと、…かもしれない、じゃないですね。会いたいと思うようになりました。途方もない話です。若かったですね、何でもできるって思ってたんです。』
『いやでも、実際に会えたわけですよね。すごいじゃないですか。』
『僕、ライブの時にアンケートも配っているんです。どの曲が良かったとか、こんなのが聴きたいとか、そういうかのが知りたくて。』
『知ってますよ。僕も何度も行ってますし。』
『あ、そうなんですね。ありがとうございます。アンケート、読むのが好きで…。そして、あるアンケートを読んで、息が止まりそうになりました。』
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