サンタクロースは君だった
「…はは。ひかりちゃんはすごいね。」
「え?」

 顔を上げると、レオが真っ直ぐにひかりを見つめていた。

「いつでも僕の欲しい言葉がわかってて、それをちゃんとくれる。」

 『いつでも』という言葉が引っかかったが、それは昔はいつでもということだと解釈し、飲み込む。

「ひかりちゃんが僕を好きになってくれるまでは、…何もしないって誓うよ。本当に、一緒にいてくれるだけでいい。」

 相手は芸能人だ。いや、芸能人だった人。これは演技かもしれない。それでもそれを見透かす術をひかりはもたないし、この瞳が嘘ならばもう何だって信じられないと思う。あの寂しさだけは、嘘じゃないとはっきり思えるからこそ頷いた。

「この家の契約は3月末までなんです。」
「…そっか。じゃあそこまでの勝負だね。僕がどれだけひかりちゃんの心に近付けるのか。」
「な、なので…えっと…時々私がレオくんのお家に伺うってことでいいですか?」
「もちろん。僕がいないときでも部屋入っていいからね。外で待つなんてことしないで。風邪ひいちゃう。」
「…い、いらっしゃるときを狙います。」
「じゃあいつでも電話なりメールなりなんなり。連絡して。ひかりちゃんからの連絡は絶対すぐ返すから。」
「だ、大丈夫です!迷惑になるようなことは…。」
「ひかりちゃん。」
「はい。」
「…迷惑なことなんて一つもないよ。ひかりちゃんと会えたり話せたりすることが、僕にとってどれだけ奇跡か、知らないでしょ?」

 それは、ひかりだってそうだ。あの冬木レオンとこうして話していることなんて、奇跡としか言いようがない。そして、その冬木レオンが忘れられない男の子だったことも。

「じゃあ、今日は一緒に僕の家に行こう。気に入ってくれたら泊まってくれてもいいし、帰るならちゃんと送るから。」
「…帰りますよ?」
「うん。それでもいいよ。僕の家を覚えてくれれば。」

 そう言って笑うレオは、さっき切なげな表情を見せた人物には見えなかった。

「じゃあ行こうか、ひかりちゃん。」
「す、すぐ帰りますからね!場所の確認だけで…。」
「わかってるよ。」
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