サンタクロースは君だった
「…ひかりちゃん、好き。」

 もう一度、少しだけ触れる唇。それ以上どう触れていいかわからないから、ひかりは動けないでいる。

「…大好きだよ、本当に。ひかりちゃんがいないとか、…ほんと無理ってよくわかった。」

 さっきよりも長く重なって、名残惜しそうに離れた唇。理解は遅れてやってきた。

「…レ…レオく…。」
「僕の初めてのキス。ひかりちゃんがいいなとは思ってたけど、…叶うなんて嬉しい。」

 そう言って笑ったレオの目から一筋涙が零れ落ちた。それで涙は終わったみたいだ。

「わ、…わた…私も…この年でおかしいけど…でも、初めて…でっ…。」
「…嬉しいな。」

 額が優しく重なって、視線を少し上げた先にはひかりを真っ直ぐに見つめるレオがいる。

「…二人で泣いて、目も赤いのにさ、…不思議だよね。今はこうやって笑える。」
「…そうだね。でもレオくんがいないと、こんな風に笑えないよ。」
「…可愛いこと言うなぁ、ひかりちゃん。」

 甘えるように少しだけ重なった唇に、恥ずかしさが増す。

「…駅が一番辛かった。ひかりちゃんがいる、自分の家に帰れないことがわかってたから。」
「…あの時、ちゃんと言えばよかったなって、すごく後悔した。」
「後悔?」
「…ちゃんと、もっと前から…レオくんのことが好きって気持ちはあったの。それなのにずるずると…言えなくて。あの日から連絡取れなくなっちゃって…こういうのを後悔っていうんだなって、…学びました。」

 ひかりの頬にレオの手が触れた。

「僕はそれを10年前に学んでたからね。」
「え?」
「今日で会えるの最後だから、ひかりちゃんにまた会えるように住所でもフルネームでも思い出の品でも何でも聞くなり貰うなりしてれば…って思ったし、好きだって言えば良かったって何度も思ってたんだよ。」
「私よりも先に、後悔の味を知ってたんだね。」
「後悔における先輩は僕だね。…笑えないけど。」

 決していいこと、とは言えないかもしれない。それでも、二人でいるから笑えることはきっとある。
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