サンタクロースは君だった
 早いもので12月24日。クリスマスイブ。仕事を終えて玄関のドアを開けると、その音に反応したであろう家の主が駆けてくる音がした。

「おかえり、ひかりちゃん!」
「ただいま、レオくん。…う…。」

 おかえりなさいのハグが、今日はやけに長い。付き合い始めて半年が経っても、スキンシップの量は減っていないような気がする。むしろ慣れるまでに時間のかかるひかりを慮って、余計に多くなっているようにも思える。素直に嬉しいので、ひかりはそのスキンシップをありがたく受け取っている。

「お疲れ様、ひかりちゃん。」
「ご飯の準備ありがとう。洗い物は任せてね。」
「一緒にやりたいから一緒にやろう。」
「うん。」

 食卓にはほかほかのご飯が並んでいる。

「今日はチーズインハンバーグとバターライス、ポトフに…シャンパン買ってきたよ。」
「豪華だ!すごい!っていうかレオくんの腕前がどんどん上がってる…。」
「料理って案外楽しいんだね。ハマるかも。」
「…越されてしまう…。」
「大丈夫大丈夫!ひかりちゃんのご飯美味しいよ!」

 レオの手先が器用だということは何となくわかっていたが、それが料理の方にも生かされているのはここ数か月の話だ。急にレパートリーが増え、凝ったものを出してくれるようになった。

「メリークリスマス、乾杯!」
「メリークリスマス。…乾杯。」

 チリンとグラスが鳴り、一口シャンパンを飲む。口当たりも甘くて、美味しい。

「ワインもあるからね。シャンパン飲み終わったら次の開けちゃおう。」
「レオくん、明日もオフだったよね。」
「うん。ひかりちゃんも明日はお休みでしょ?だからいっぱい飲んで気持ちよーく酔ったら、ごろごろしたいなぁって。」
「理想的な休み!」
「ひかりちゃん、お布団大好きだもんね。」
「…ごめんね、アクティブじゃなくて。」
「ううん。僕もアクティブじゃないもん。ひかりちゃんとずっと一緒にいられるから嬉しいし。」

 優しい時間が1年続いた。それは本当に、当たり前のことではない。レオがたくさん努力してくれた先の、今だ。
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