サンタクロースは君だった
「もう1年になるんだね。」
「…うん。早かったね。最後のテレビ出演を終えて、真っ直ぐにひかりちゃんのアパートに向かったんだ。」
「…びっくりしたよ。レオくんが帰ってこなかったときより、多分、あれの方がびっくりしてた。」
「ごめんね、あれ、完全にストーカーのやることだよね。…というか本当はやっちゃダメなことだと思うんだけど。でもひかりちゃんは特別ってことで。」
レオは仕事用の書類や手帳などが入っているケースから一枚の紙を取り出した。
「…なにこれ?」
「ひかりちゃんが書いてくれたアンケート。」
「えっ!?」
「ずっと持ち歩いてるよ。これは僕にとってお守りみたいなものだから。」
「う、うわー…待って。普通にファン心理で書きたいことを書きたいように書いたものだった気が…。」
「うん。でもすごーく嬉しかったよ、僕。」
「…完全には思い出せないけど…結構恥ずかしいこと、書いてるよね?」
「…恥ずかしいかどうかは、…自分で確かめる?」
差し出されたアンケート用紙。間違いなく自分の字だ。
『「勿忘草」をまさか聴けるとは思っていなかったので、それが一番嬉しかったです。どの曲も好きなのですが、「勿忘草」だけは私にとって少し特別なので。
レオンさんと似た名前の男の子が勿忘草を拾ってきたことがあって、その時に名前を教えてあげたんです。何かその時のこととよく似ている歌詞で、何故かその男の子のことも忘れられなくて、そんな時にふと私の中に重なった歌詞がたくさんありました。だから個人的にとても思い入れの強い曲を、生で聴くことができて嬉しかったです。歌い方がなんとなくレオンさんに似ていて、レオンさんの声を聴くとあの子を思い出します。男の子も歌うことが好きだったので、レオンさんみたいにどこかで歌ってくれていたらな、なんて思いながら聴かせていただきました。ありがとうございました。』
「っ…な、なにこれ…。」
痛々しすぎる。アンケートの感想に書くような話じゃない思い出話を書きすぎている。
「ひかりちゃんと僕の思い出話。」
「そ、そうだけど…。」
「これを読んだ日、僕は眠れなかった。」
「え?」
「やっと本物のひかりちゃんに、出会えたからね。」
夢みたいな、本当の話だ。聖なる夜に現れたのはサンタクロースではなく、どこかに置いてきてしまった淡い想いの相手。
「…うん。早かったね。最後のテレビ出演を終えて、真っ直ぐにひかりちゃんのアパートに向かったんだ。」
「…びっくりしたよ。レオくんが帰ってこなかったときより、多分、あれの方がびっくりしてた。」
「ごめんね、あれ、完全にストーカーのやることだよね。…というか本当はやっちゃダメなことだと思うんだけど。でもひかりちゃんは特別ってことで。」
レオは仕事用の書類や手帳などが入っているケースから一枚の紙を取り出した。
「…なにこれ?」
「ひかりちゃんが書いてくれたアンケート。」
「えっ!?」
「ずっと持ち歩いてるよ。これは僕にとってお守りみたいなものだから。」
「う、うわー…待って。普通にファン心理で書きたいことを書きたいように書いたものだった気が…。」
「うん。でもすごーく嬉しかったよ、僕。」
「…完全には思い出せないけど…結構恥ずかしいこと、書いてるよね?」
「…恥ずかしいかどうかは、…自分で確かめる?」
差し出されたアンケート用紙。間違いなく自分の字だ。
『「勿忘草」をまさか聴けるとは思っていなかったので、それが一番嬉しかったです。どの曲も好きなのですが、「勿忘草」だけは私にとって少し特別なので。
レオンさんと似た名前の男の子が勿忘草を拾ってきたことがあって、その時に名前を教えてあげたんです。何かその時のこととよく似ている歌詞で、何故かその男の子のことも忘れられなくて、そんな時にふと私の中に重なった歌詞がたくさんありました。だから個人的にとても思い入れの強い曲を、生で聴くことができて嬉しかったです。歌い方がなんとなくレオンさんに似ていて、レオンさんの声を聴くとあの子を思い出します。男の子も歌うことが好きだったので、レオンさんみたいにどこかで歌ってくれていたらな、なんて思いながら聴かせていただきました。ありがとうございました。』
「っ…な、なにこれ…。」
痛々しすぎる。アンケートの感想に書くような話じゃない思い出話を書きすぎている。
「ひかりちゃんと僕の思い出話。」
「そ、そうだけど…。」
「これを読んだ日、僕は眠れなかった。」
「え?」
「やっと本物のひかりちゃんに、出会えたからね。」
夢みたいな、本当の話だ。聖なる夜に現れたのはサンタクロースではなく、どこかに置いてきてしまった淡い想いの相手。