I need you !
その夜、私は、魁のマンションに泊まることになっていた。
シャワーを浴びるために、洗面所にいくと、コンタクトケースが置いてあった。
「魁! 魁って、コンタクトだっけ?」
《いや、目はいいから。どうして?》
英語で、返された。
《このコンタクトケース誰の?》
《ああ、昨日、柳澤くんがコンタクトがずれて痛いからって、入れ直していたから、彼女のかな?》
《えっ、彼女、この部屋に入ったの?》
《うん、帰りに、持っていってほしい書類があってさ、翌日は俺が工場の方に行くから、その日の内に渡したかったから、寄ってもらったんだ。》
秘書さんは、確信犯だ。私の目に触れるのを謀って、わざと置いて行ったんだ。
《魁、覚えておいて! 日本では、男1人の部屋に、女を入れないものなの!秘書さんだって知っているはずよ。》
《そんなの、もちろん知ってるさ。だけど、目が痛いって、とてもひどそうだったから。それに、俺は、彼女のことを女性として見たことないよ。いつも言うけど、ユーリだけだから。》
《いいわ、今回は大目に見てあげる。でも、今後、この部屋は女性入室禁止よ。破ったら、どうなるかわかってるよね。》
《ありがとう♪ 約束する、もう絶対に入れない。》
初めてのふたりの喧嘩だった。
今までは、離れていたから、見えなかったお互いの事が気掛かりになることを、改めて知った。
でも、今回だけでなく、これから何度となく、喧嘩は起きてしまうなんて、この時は、気がつかなかった。