I need you !
いつの間にか、寝たんだろう。
起きた私は、洗面所で鏡を見て、驚いた。
泣き腫らした真っ赤な目は、見るに耐えないほど、腫れている。
今まで、生きてきて初めてのことだった。
それでも、魁のことを考えると、また涙が流れ落ちる。
私は、これからどうすればいいのだろう?
魁がモデル時代に遊んでいたのは、知っていた。あの金髪女性が恋人だったのだ。
あの夜、魁から感じた香水は、彼女のものに違いない。
ふたりは、再会して、あのホテルで何をしてたの?
モデル仲間と飲んだと言うのは、彼女とのことを誤魔化すための嘘?
ユーリだけだよ、と言う魁の言葉を信じられなくなった。
世界に、ひとりだけ、取り残されたような感覚に陥った。
目を瞑ると、エレベーターのあの光景、そして、新聞の写真、それが次から次へと、私の回りを取り囲んで、迫ってくる。
苦しくて、苦しくて、息ができなくなる。
そんな状態が、まる1日続いた。
誰か、助けて!
でも、一番助けて欲しい人は、私を裏切った。
もうここに、私は、いてはいけない。
私の居場所は、もうない。
日本に帰ろう。
日本に帰れば、楽になれるだろう。
早く、この苦しみから逃れたい。
パスポートさえあれば、飛行機に乗れる。
私は、苦しさから逃げるように、その夜の最終便で機上の人となった。
飛行機に乗る直前、静おばさんには、メールを送った。
「日本に帰ります」と。
そして、スマホの電源を切った。