伯爵家の四姉妹
「ルナ良かったわね!フェリクス卿がエスコートしてくれるなんて滅多にないわよ!」
ルシアンナがにこやかに言った。
フェリクスといえば、未婚女性が今一番、理想の結婚として夢見るお相手だ。ルナにとって拷問に等しかった。
「じゃあ代わってくれる?お姉様」
「あんたもたまには目立ってみなさいよ」
クスクスとルシアンナが笑った
「はしたないわ。そんな口調は」
ステファニーがルシアンナをたしなめた。ステファニーとルシアンナは真逆で、どちらもお互いが気にくわない。
「ふん、お高くとまってるわねステファニー。ばっかみたい」
ステファニーは鼻を鳴らした。
そんなぞんざいな話し方をしていても、美貌は損なわれていない。むしろ親しみ易く感じさせるのだ。
ルシアンナに振り回されたい、と男たちはますます寄ってくるのだった。
ステファニーはといえばどこまでもレディらしく振る舞うべきだと常々思っているので、
「ルナ、社交界デビューしたら外ではルシアンナに話しかけてはいけないわ。貴女にも悪い評判がたってしまうもの」
ルナはルシアンナとくっついて目立つつもりは更々なく、無言でルシアンナとステファニーを見つめた。
いつだってブロンテ伯爵令嬢を名乗るのは、苦行だ。どの姉と比べられる事もルナは本当にうんざりしていて、デビュー前から社交界の憧れなど波の前の砂の城のように崩れて跡形もない。
「ラファエルお兄様に頼めなかったの?」
つい父を責める口調になってしまう。
「何を言うんだルナ。フェリクス卿だぞ?立派でこの上ない青年じゃないか。何が不満だ。それにラファエルは若すぎてデビュタントのエスコートには不向きだ」
「お父様はちっとも分かってらっしゃらないのね。私は目立ちたくないの、フェリクス様にエスコートされたらとんでもなく目立つじゃないの」
「目だって何がいけないと言うのよ」
リリアナが驚いてルナを見た。
家族の注目を浴びてルナは声を掠れさせて
「只でさえブロンテ姉妹の妹なのに、って言われるのに…」
ルナはかたんと椅子から立ち上がる。
「もううんざりよ!お姉様たちと比べられるの、なのにこれからはもっとずっと言われるんだわ」
「まあルナ。貴女だって社交界に出れば逆にお姉様たちがルナのお姉様といわれるわ」
「そんなことあり得ない!」
「私は目立ちたくないの!壁の花になりたいの」
途端にケラケラとルシアンナが笑った
「あんたバカねぇ。壁の花なんて恥ずかしい余計に目立つわよ」
「今日はデビューなのだから、ダンスカードはいっぱいよ」
ステファニーが優しくルナのに話しかけ、ルシアンナをきっと睨み付けた。
「ルシアンナ、いい加減にして貴女がそんな風だからルナが目立ちたくないなんて言うのよ。ルシアンナの行動が恥ずかしいの、わたくしだっていつも恥ずかしい思いをしてるわ」
「黙って、ステファニー!」
ルシアンナもむっとしてステファニーを睨み付けた