伯爵家の四姉妹

会場に拍手で迎えられると、フェリクスはルナを目立つ集団につれていった。

そこには女王然と微笑むフェリクスに似た女性、妹のジョージアナ・ウィンスレットを取り巻く一団だった。

ジョージアナをエスコートするフレデリックは、ジョルダンの兄だという。
フェリクスに紹介されたいずれの貴公子も立派で素敵だった。

「わたくしはお兄様のエスコート卒業するわ。これからはルナをエスコートしてね」
ジョージアナはいたずらっぽくフェリクスに微笑みかけた。
ルナはフェリクスとジョージアナを見た。

「そうだね、私もそろそろ妹のエスコート役は卒業させてもらうとするか」
つまりフェリクスはずっとジョージアナのエスコートをつとめていたのだろう。

ジョージアナはルナの隣に目をやり
「アデリン、アナベルデビューおめでとう」
アデリンとアナベルはお辞儀をすると、いかに感動しているかをジョージアナに語りだした。

ルナもほほえましく聞いていると
「あら、エドワードとそれにシャーロットだわ」
ジョージアナが歩み寄ってくる注目の二人を見ていて、ルナははっと息を飲んだ。

男性は銀髪に青い瞳の美しい貴公子で女性は金の髪に金の瞳の美しい女性だった。月光を編み上げたよう男性と星の精のような女性。完璧な一対だ
「義兄のエドワードと姉のシャーロットよ」
アデリンが自慢げにルナに紹介した。ルナは見とれながらお辞儀をした。

「社交界はひさしぶりだから、すっかり田舎者の気持ちよアナ」
笑みをジョージアナに向けてシャーロットは言った。
「お姉様は出産が重なってしばらく社交界から遠ざかっていたのよ」
隣のアデリンが解説をしてくる。
ジョージアナといい、シャーロットといい姉たちと同じくらい、それよりも美しい女性たちははじめてだ。
会場のどこかに姉たちと父たちもいるはずだが、まったく分からない。

人垣が割れて、王族が入場して舞踏会が始まる。遠くにきらびやかな王族が見え、国王の挨拶がされたようだ。

王族が踊り終えると、いよいよフェリクスに伴われルナもダンスを踊りだした。
「緊張しないで」
フェリクスが微笑みかけると、ルナはつられて踊りだした。
「とても上手だよルナ」
誉め上手なフェリクスはお世辞もうまく囁いてくれる。

おそれていたのが嘘のように、社交界は楽しいものだった。何よりフェリクスはとても素敵な貴公子であるし父に感謝の気持ちがふつふつと湧きあがった。

ダンスも楽しいし、貴公子たちとの会話も楽しく姉たちの名前とルナを比較されることもなかった。それはきっとフェリクスをはじめとする貴公子たちが、思いやり溢れる男性だからだろうとルナは感じた。
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