伯爵家の四姉妹

ステファニーが言った通り、ルナのダンスカードは埋まっていたしフェリクスのエスコートは完璧でルナから目を離さずにマナーを一つずつ教えてくれた。

他にも素敵な貴公子たちはいたけれど、ルナはすっかりフェリクスの虜だった。

こんなに素敵な人はいない!

だけど、高望みだということもルナは勿論冷静な頭の片隅で理解はしていた。

フェリクスが渡してくれたジュースを飲んでいると、次のダンスの相手としてレオノーラがやって来た。

「えっ!お姉様も書いてくれていたの?」
「なぁに?不満なの?ルナ」
くすくすと近衛騎士姿のレオノーラが笑った。
隣にはラファエルもいて、
「お兄様もこれたのね?」
1つ歳上のラファエルは肩をすくめた。
「かわいい妹のデビューじゃないか。一曲踊らずにいられるわけないだろ」
みると、レオノーラの次にはラファエルの名前もあった。

レディたちのレオノーラの人気はすさまじく、レオノーラとルナにはバシバシと視線がぶつかる。
男性たちにひけをとらずレオノーラのエスコートは素晴らしかった。

「ねぇ、お姉様はドレスをきないの?」
「ルナがこうしてデビューしたから私も今度ドレスを着てみようか?」
くすくすとレオノーラは笑った。
「ほんとう?楽しみにしてるわ!きっとおそろしく綺麗なレディでしょうね」
騎士の姿でもこの上なく美しいレオノーラだ。着飾ればものすごい美貌と相まって注目の的だろう。

ラファエルはしばらく見ないうちに背が伸びて青年になりつつあった。まだ少年の線の残った彼は今とてもレオノーラに似ていた。レディたちはそっくりな彼に色めき立った。
きっと来年あたりからはさぞかし女性たちがまとわりつきそうだ。
「お兄様は今日は家に帰るの?」
「うん、今日はね」

ラファエルは今友人たちと過ごす方が好きなのだとルナはよくわかっていた。
何せレオノーラはともかくステファニーとルシアンナのやり取りはルナだってうんざりだ。

躍り終えると、年頃の娘をもつ親だろうか、ラファエルにどんどん近寄り話しかける。ルナはそれに苦笑するとフェリクスの元へ戻った。
「ラファエルは囲まれてしまったね」
くすっとフェリクスが笑った。
「そうみたいです」
ルナも笑った。

ダンスカードの次の名前には再びフェリクスの名前が書かれていて、ルナは驚いてフェリクスを見た。
「イアンに代わってもらった」
くすっとフェリクスは笑う。ルナは嬉しくなってぽっと赤くなった。
2度もフェリクスと踊れるなんて!期待してしまうじゃない
ルナは頬を上気させて、フェリクスを見上げた。
しかも、ワルツだ。

グレーのテールコートと、白のドレスが回るたびにフワリと動きに合わせて舞い、ルナはすっかり夢心地だった。
こんなに素敵なデビューをすることが出来るなんて自分はなんて幸せなんだろうとルナはこの瞬間をしっかりと刻み込もうと心に誓った。
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