伯爵家の四姉妹
手紙
「昨日はどうだったかな?ルナ」
朝食の席で父アルマンに問われてルナは素直に
「とても素晴らしかったわお父様!」
その言葉に父も母もルナの明るい顔におや、と目を向けた。
「フェリクス様は本当に素敵な貴公子で、感激したわ。とても楽しい社交界デビューができて感謝しているわ」
とにっこりとアルマンに微笑みかけた。
「まぁ良かったわねルナ」
ステファニーがルナに優しく声をかけた。
「ほんとよ、この国の最高の貴公子ですもの。素晴らしいに決まってるわ」
ルシアンナが珍しくステファニーに嫌みを言わずうなずいた。
「ラファエルはどうしたのかしら?まだ起きていないの?」
リリアナは従僕に尋ねた
「昨夜の帰りも遅かったようで、お休みでございます」
「まぁ、仕方のない子ね!」
リリアナは眉をあげたものの、ラファエルが昨日たくさんの人に囲まれてなかなか脱出出来なかったことをわかっていたので、強くは怒れなかったようだ。
「ルナお嬢様お手紙でございます」
執事のアントンがルナに手紙を渡した。
差出人の名前をみて、ルナは飛び上がった!
「お父様!お母様!フェリクス様からよ!」
「「ええっ!!」」
姉たちから驚きの声があがる。
ルナは胸に手を当てて呼吸を整えてからもう一度宛名に、ルナ・レイア・ブロンテとあるのをみて、差出人にはフェリクス・ウィンスレットとあるのを見た。
用紙は花模様の透かしの入った美しい物で、ウィンスレット公爵家紋章が赤の蜜蝋で封をされていた。
親愛なるレディ ルナ・レイア
昨夜の舞踏会は楽しんでくれたかな?
私はもちろん君のエスコートが出来てとても楽しく過ごせたことを伝えたいと思う。昨日の話でルナは音楽が好きだと聞いたので、来週我が家で音楽会を開くので是非とも招待を受けてほしい。
といった内容が書かれていた。
「どうしよう!音楽会に招待してくださるのですって」
ルナはリリアナに困惑の顔を向けた。
手紙をもらうことも、招待を受けることもまるで想像もしていなかった。
「まぁ良かったじゃないの!ルナ」
リリアナはルナに笑顔を向けた。
「どうしよう。返事はどうすればいいのかしら?これは本当にお誘いなの?それとも社交辞令なの?」
ルナは椅子から立ち上がり、無駄にうろうろと歩き回った。
「落ち着きなさいってルナ」
ルシアンナが笑いながらルナを椅子に座らせた。
「これはきちんとしたご招待で間違いないわ。ちゃんとお手紙で行きますって書けばいいの。ね?」
ルナはこくこくとうなずいた。
「きっとフェリクス様はエスコートしたルナを気遣って社交界に馴染めるようにしてくださってるのよ安心して行きなさい」
珍しくルシアンナが優しくルナに言った。
「デビューをエスコートしてくださる男性はそこまで気を配って下さるのね」
ルナはやっとほっとして、ルシアンナに
「お姉様、お返事の書き方を教えて」
「後でちゃんと教えてあげるから、今は落ち着いて食事をとりなさいな」
ルナはようやく落ち着いてうなずくと、ナイフとフォークを手にもった。
手紙が気になり、ルナは上の空で朝食の席にいた。
またお会いできる上に、お屋敷に招待してもらえるなんてなんて自分は幸運なんだろうとルナは感激し続けていた。
朝食の後も自室でフェリクスからの手紙を読み返して、フェリクスの字の書く文字の美しさや文章の癖をルナはうっとりと眺め続けた。フェリクスの使っている香水の香りがほんのりと漂い、昨夜のワルツを思い出す。
「あらあら、穴が空きそうね」
くすくすとルシアンナが部屋に入ってきた。
ルシアンナは紙の選び方から、インクの色、文章の使い方を丁寧に教えてくれた。
「ありがとうお姉様」
ルナはルシアンナの頬にキスをして、手紙を書き上げてベルを鳴らし届けてもらうように伝える。
手紙を書き終えると今度はリリアナのいる家族の部屋に向かうと
「お母様、ドレスはどうすればいいのかしら?」
「あらあらドレスも気になるのね?」
「少しでも上品で、大人っぽく見えるのがいいわ」
リリアナはルナの張り切りようにほほえましくそして、娘が愛らしくてクローゼットルームに一緒に行く。
センスのいいメイドのララが、ドレス選びを手伝う。
クローゼットルームの中は姉たちとルナのドレスがたくさんあった。すらりと背の高い姉たちに比べると少し低めのルナだったが、直せば着れるものばかりだ。
「こちらなどいかがでしょう?」
ララが落ち着いた青の少し大人びたデザインの中にも可愛らしいドレスを選んでくれた。
「あら、いいじゃない?ステファニーのだったかしらまったく着ていた覚えがないわね」
ララが着せてくれると、針で裾と袖を止めて調節する。
「いいかしら?」
「ええ、ルナ。とても素敵よ」
リリアナは微笑んだ。
靴と扇、それからバッグをララが出してくれてルナは満足してララに礼をいって、
「来週着るのよ、お願いするわね」
とご機嫌に言った。
ルナは流行りの歌を歌いながらステファニーの部屋に行った。
「お姉様ピアノの練習を見てほしいの」
刺繍をしていたステファニーは微笑むと、うなずいて
「もちろん良いわよ」
目的があれば練習にも身が入るというものだ!
「ルナ、張り切ってるね」
笑いながらラファエルが入ってきて、近くの椅子に座った。
「お兄様、おはよう」
「あんまり浮かれると、後が辛くなるよ?」
「お兄様、私だってただの親切だって事くらいわかってるわよ」
ルナはラファエルに向き直って言った。
「でも、あんなに素敵な貴公子から手紙をもらったりお屋敷に招待されたりなんて、今後ないでしょうから楽しんでもばちは当たらないわ」
「わかってるんならいいけど?」
「どんなに素敵なレディだって選び放題なフェリクス様だもの。私なんて相手にならないって知ってるもの」
ルナは末っ子だけあって姉や兄に甘やかされてもいたけれど、現実はよーく分かっていた。
フェリクス・ウィンスレットは自分には高望みで不釣り合いだと。
「よし、俺がちゃんとぴったりな相手を見つけてやるから安心していいよ」
ラファエルがルナの頭を撫でて、立ち去った。
「お兄様の選ぶ相手なんて、それも心配よね?お姉様」
「ほんとね、ルナ」
ステファニーは、くすくすと笑った
翌日もうきうきとして、書斎で読書をしていたルナにアントンが来客を伝えた。
「フェリクス・ウィンスレット卿がお見えです」
「えっ!?」
応接間で父が穏やかに話をしていた。
「ようこそ、フェリクス様」
ルナはお辞儀をすると、フェリクスは立ち上がって優雅に会釈を返した。今日はグレーのフロックコート姿だ。
「やぁ、レディ ルナ」
フェリクスは、ルナをソファに促すと
「返事をありがとう、それで当日はこちらにお迎えにあがると伯爵にお伝えしていたところだ」
にこやかに告げるフェリクスにルナは戸惑った。
直接訪問して伝えるなんて、ちょっとした親切にも程がある。
「あと、これを君に」
と可愛らしい花束を渡してくれた
「ありがとうございますフェリクス様。とても可愛らしい花束だわ」
「今日は突然訪問してしまったから、そろそろおいとましよう。ではまた来週に」
とフェリクスはルナの手をとり甲にキスをした。
洗練されたその動きにルナは見とれてながらも
「はい、楽しみにしています」
と微笑んで告げた
アントンがフェリクスを送ると、
「ねぇお父様。フェリクス様は親切すぎるわお父様が何か頼んでくださったの?」
「まさか、頼んだのはデビューのエスコートだけだ」
「そう?」
まあ、嘘かもしれないが優しい嘘でも良いかなとルナは部屋に向かい花束を飾るようにメイドを呼んだ。
部屋に花を飾ると、ふんわりと優しい色使いの花たちはルナの好みにぴったりで、香りも部屋に柔らかに漂う
「はじめにこんなに素敵な男性と知り合ってしまっては、後の方が霞んでしまうわ…」
ルナは苦笑した。
フェリクスの行動はひとつひとつがルナを喜ばせることばかり。
「本気で好きになってしまったら、どうすればいいの?」
ルナは開いていた、綺麗な細工の箱にフェリクスからの手紙と花束を包んでいた包装紙とそれからリボンを納めた。
花を一つずつとり、本に挟んで押し花にする。
大切にとっておきたかったのだ。いつか思い出せるように
ルナは日記に、とっておきのことは絵も描いていた。
もちろん舞踏会の事も昨日の手紙もそして、花束も絵に残す。
幸せなひとときを紙の上に留めるのだった
朝食の席で父アルマンに問われてルナは素直に
「とても素晴らしかったわお父様!」
その言葉に父も母もルナの明るい顔におや、と目を向けた。
「フェリクス様は本当に素敵な貴公子で、感激したわ。とても楽しい社交界デビューができて感謝しているわ」
とにっこりとアルマンに微笑みかけた。
「まぁ良かったわねルナ」
ステファニーがルナに優しく声をかけた。
「ほんとよ、この国の最高の貴公子ですもの。素晴らしいに決まってるわ」
ルシアンナが珍しくステファニーに嫌みを言わずうなずいた。
「ラファエルはどうしたのかしら?まだ起きていないの?」
リリアナは従僕に尋ねた
「昨夜の帰りも遅かったようで、お休みでございます」
「まぁ、仕方のない子ね!」
リリアナは眉をあげたものの、ラファエルが昨日たくさんの人に囲まれてなかなか脱出出来なかったことをわかっていたので、強くは怒れなかったようだ。
「ルナお嬢様お手紙でございます」
執事のアントンがルナに手紙を渡した。
差出人の名前をみて、ルナは飛び上がった!
「お父様!お母様!フェリクス様からよ!」
「「ええっ!!」」
姉たちから驚きの声があがる。
ルナは胸に手を当てて呼吸を整えてからもう一度宛名に、ルナ・レイア・ブロンテとあるのをみて、差出人にはフェリクス・ウィンスレットとあるのを見た。
用紙は花模様の透かしの入った美しい物で、ウィンスレット公爵家紋章が赤の蜜蝋で封をされていた。
親愛なるレディ ルナ・レイア
昨夜の舞踏会は楽しんでくれたかな?
私はもちろん君のエスコートが出来てとても楽しく過ごせたことを伝えたいと思う。昨日の話でルナは音楽が好きだと聞いたので、来週我が家で音楽会を開くので是非とも招待を受けてほしい。
といった内容が書かれていた。
「どうしよう!音楽会に招待してくださるのですって」
ルナはリリアナに困惑の顔を向けた。
手紙をもらうことも、招待を受けることもまるで想像もしていなかった。
「まぁ良かったじゃないの!ルナ」
リリアナはルナに笑顔を向けた。
「どうしよう。返事はどうすればいいのかしら?これは本当にお誘いなの?それとも社交辞令なの?」
ルナは椅子から立ち上がり、無駄にうろうろと歩き回った。
「落ち着きなさいってルナ」
ルシアンナが笑いながらルナを椅子に座らせた。
「これはきちんとしたご招待で間違いないわ。ちゃんとお手紙で行きますって書けばいいの。ね?」
ルナはこくこくとうなずいた。
「きっとフェリクス様はエスコートしたルナを気遣って社交界に馴染めるようにしてくださってるのよ安心して行きなさい」
珍しくルシアンナが優しくルナに言った。
「デビューをエスコートしてくださる男性はそこまで気を配って下さるのね」
ルナはやっとほっとして、ルシアンナに
「お姉様、お返事の書き方を教えて」
「後でちゃんと教えてあげるから、今は落ち着いて食事をとりなさいな」
ルナはようやく落ち着いてうなずくと、ナイフとフォークを手にもった。
手紙が気になり、ルナは上の空で朝食の席にいた。
またお会いできる上に、お屋敷に招待してもらえるなんてなんて自分は幸運なんだろうとルナは感激し続けていた。
朝食の後も自室でフェリクスからの手紙を読み返して、フェリクスの字の書く文字の美しさや文章の癖をルナはうっとりと眺め続けた。フェリクスの使っている香水の香りがほんのりと漂い、昨夜のワルツを思い出す。
「あらあら、穴が空きそうね」
くすくすとルシアンナが部屋に入ってきた。
ルシアンナは紙の選び方から、インクの色、文章の使い方を丁寧に教えてくれた。
「ありがとうお姉様」
ルナはルシアンナの頬にキスをして、手紙を書き上げてベルを鳴らし届けてもらうように伝える。
手紙を書き終えると今度はリリアナのいる家族の部屋に向かうと
「お母様、ドレスはどうすればいいのかしら?」
「あらあらドレスも気になるのね?」
「少しでも上品で、大人っぽく見えるのがいいわ」
リリアナはルナの張り切りようにほほえましくそして、娘が愛らしくてクローゼットルームに一緒に行く。
センスのいいメイドのララが、ドレス選びを手伝う。
クローゼットルームの中は姉たちとルナのドレスがたくさんあった。すらりと背の高い姉たちに比べると少し低めのルナだったが、直せば着れるものばかりだ。
「こちらなどいかがでしょう?」
ララが落ち着いた青の少し大人びたデザインの中にも可愛らしいドレスを選んでくれた。
「あら、いいじゃない?ステファニーのだったかしらまったく着ていた覚えがないわね」
ララが着せてくれると、針で裾と袖を止めて調節する。
「いいかしら?」
「ええ、ルナ。とても素敵よ」
リリアナは微笑んだ。
靴と扇、それからバッグをララが出してくれてルナは満足してララに礼をいって、
「来週着るのよ、お願いするわね」
とご機嫌に言った。
ルナは流行りの歌を歌いながらステファニーの部屋に行った。
「お姉様ピアノの練習を見てほしいの」
刺繍をしていたステファニーは微笑むと、うなずいて
「もちろん良いわよ」
目的があれば練習にも身が入るというものだ!
「ルナ、張り切ってるね」
笑いながらラファエルが入ってきて、近くの椅子に座った。
「お兄様、おはよう」
「あんまり浮かれると、後が辛くなるよ?」
「お兄様、私だってただの親切だって事くらいわかってるわよ」
ルナはラファエルに向き直って言った。
「でも、あんなに素敵な貴公子から手紙をもらったりお屋敷に招待されたりなんて、今後ないでしょうから楽しんでもばちは当たらないわ」
「わかってるんならいいけど?」
「どんなに素敵なレディだって選び放題なフェリクス様だもの。私なんて相手にならないって知ってるもの」
ルナは末っ子だけあって姉や兄に甘やかされてもいたけれど、現実はよーく分かっていた。
フェリクス・ウィンスレットは自分には高望みで不釣り合いだと。
「よし、俺がちゃんとぴったりな相手を見つけてやるから安心していいよ」
ラファエルがルナの頭を撫でて、立ち去った。
「お兄様の選ぶ相手なんて、それも心配よね?お姉様」
「ほんとね、ルナ」
ステファニーは、くすくすと笑った
翌日もうきうきとして、書斎で読書をしていたルナにアントンが来客を伝えた。
「フェリクス・ウィンスレット卿がお見えです」
「えっ!?」
応接間で父が穏やかに話をしていた。
「ようこそ、フェリクス様」
ルナはお辞儀をすると、フェリクスは立ち上がって優雅に会釈を返した。今日はグレーのフロックコート姿だ。
「やぁ、レディ ルナ」
フェリクスは、ルナをソファに促すと
「返事をありがとう、それで当日はこちらにお迎えにあがると伯爵にお伝えしていたところだ」
にこやかに告げるフェリクスにルナは戸惑った。
直接訪問して伝えるなんて、ちょっとした親切にも程がある。
「あと、これを君に」
と可愛らしい花束を渡してくれた
「ありがとうございますフェリクス様。とても可愛らしい花束だわ」
「今日は突然訪問してしまったから、そろそろおいとましよう。ではまた来週に」
とフェリクスはルナの手をとり甲にキスをした。
洗練されたその動きにルナは見とれてながらも
「はい、楽しみにしています」
と微笑んで告げた
アントンがフェリクスを送ると、
「ねぇお父様。フェリクス様は親切すぎるわお父様が何か頼んでくださったの?」
「まさか、頼んだのはデビューのエスコートだけだ」
「そう?」
まあ、嘘かもしれないが優しい嘘でも良いかなとルナは部屋に向かい花束を飾るようにメイドを呼んだ。
部屋に花を飾ると、ふんわりと優しい色使いの花たちはルナの好みにぴったりで、香りも部屋に柔らかに漂う
「はじめにこんなに素敵な男性と知り合ってしまっては、後の方が霞んでしまうわ…」
ルナは苦笑した。
フェリクスの行動はひとつひとつがルナを喜ばせることばかり。
「本気で好きになってしまったら、どうすればいいの?」
ルナは開いていた、綺麗な細工の箱にフェリクスからの手紙と花束を包んでいた包装紙とそれからリボンを納めた。
花を一つずつとり、本に挟んで押し花にする。
大切にとっておきたかったのだ。いつか思い出せるように
ルナは日記に、とっておきのことは絵も描いていた。
もちろん舞踏会の事も昨日の手紙もそして、花束も絵に残す。
幸せなひとときを紙の上に留めるのだった