ある雪の降る日私は運命の恋をする
「……すか…………朱鳥ー、起きてー」

「ん?楓摩……?」

「おはよ、朱鳥。」

さっきまでの私服とは違い、もうすっかり白衣姿の楓摩がニコッと笑いかけてくる。

「あれ?今、何時?」

「8時だよ。夜ご飯、食べ損ねちゃったみたいだけど、お腹空いた?」

言われてみれば、お昼ご飯から何も口にしていない。

「あんまり、空いてないかな?お昼ご飯、ちょっと多かったし。」

「そっか。じゃあ、今から、さっき言った通り明日からの事を説明するね。」

「うん。」

「まずは、明日。明日は、抗がん剤を始めると、免疫力が無くなっちゃうから、朝から無菌室っていう部屋に移動してもらって、吐き気止めの点滴をしてから、その後に抗がん剤の点滴をするよ。あとは、採血かな?治療前と後で結果を比べたいからさ。ここまでは、大丈夫?」

「うん。」

点滴に採血……

注射ばっかじゃん…

痛いのは…嫌だなぁ……

「じゃあ、次ね。その後は、一日中その部屋で安静にしてもらうよ。もちろん、無菌室から出るのは禁止ね。それで、その後も抗がん剤の点滴を一週間続けてもらうよ。それで、1回目の治療はおしまい。その後に休憩の期間を挟んで、それから検査して、結果がよければ一時帰宅。もしくは、退院。結果が変わってなかったら、また、その後から2回目の治療かな…」

「そっか。……ねぇ、楓摩。」

「ん?なあに?」

「その…副作用って……あるの?」

さっきから、ずっと、不安だったことを聞いた。

治療とか、そんな事よりも、不安だった。

テレビで見る限りは、みんな、とても辛そうで、苦しそうだった。

「……副作用は、出る人と出ない人がいるけど…大抵の人は出るかな……だから、それなりの覚悟はしてて欲しいな。」

「わかった……」

「じゃあ、副作用についても説明するね。まず、症状は人それぞれだけど、一番多いのは、吐き気かな。だから、抗がん剤をする前に吐き気止めを入れるんだけど、それでもやっぱり吐き気はすると思う。あとは、倦怠感とか頭痛とか、そういう症状もある。口内炎が出来ることもあるし、他の病気にもかかりやすくなる。」

「そんなに……」

そんなに、色んな症状が来て、私…耐えられるのかな……?

「これが、一気に来ることはないと思うけど、やっぱり少し覚悟しておいてね。でも、辛かったら俺たちにすぐ言ってよ?出来るだけ、朱鳥が楽になれるようにするからさ。だから、何かあったら俺や陽向、もしくはナースコールで看護師さんに言う事。いい?」

「うん、わかった。」

わかった。と言ったものの、まだ心に不安が残る。

「じゃあ、朱鳥はもう寝な。明日から、抗がん剤で大変だから眠れるうちに寝ておいた方がいいよ。」

「うん。そうする。」

楓摩は、部屋の電気を消して、私の枕元の電気だけをつけた。

すると、楓摩は私の手を握りそっと、頭を撫でてくれた。

「朱鳥、明日から頑張ろうね。頑張ったら、その分楽しい事がきっと待ってるから。今日は、朱鳥が寝るまでここに居るからさ、安心して眠りな。」

「ありがと…楓摩。おやすみ。」

「うん。おやすみ。」
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