ある雪の降る日私は運命の恋をする
チュンチュンと鳴く鳥の声で目が覚めた。

いよいよ、今日からか……

今、何時だろ…?

時計は朝8時半を指している。

私、12時間近くも寝てたんだ。

コンコンッ

「朱鳥ー、おはよー。調子はどう?」

「おはよ、楓摩。なんか、寝過ぎちゃった気がするけど、まぁ元気だよ。」

「そっか。なら、早速なんだけど、病室移動してもらおうかな。診察も移動した後でするから。」

「うん。」

楓摩にも手伝ってもらって、荷物をまとめる。

私の場合、荷物が少ないから、すぐに終わった。

「よし、じゃあ、移動しよっか。俺に付いてきて。」

楓摩の後を歩いて、着いた所には、大きな扉があった。

白くて大きいだけの扉。

「じゃあ、ここに入って。」

楓摩がドアを開けてくれる。

けど……

怖い。

なんだか、1人だけ別の空間にいるみたいで嫌だ。

ドアも、普通の病室みたいにスライド式じゃなくて、ドアノブがある。

ドアの他に周りには何もなく、ただ廊下が続いているだけ。

「…………」

「朱鳥、大丈夫。怖くないよ。この奥は、いつもの病室とはちょっとだけ違うけど、ほとんど同じだから大丈夫。俺も付いて行くし、怖くないよ。」

「ほん…と……?」

「うん。本当。大丈夫だから、ほら、一緒に行こ?」

コクンと頷き、楓摩と手を繋いで恐る恐るドアの中に入る。

中には、手を洗う所がいっぱいあって、その奥に病室へと続く扉があった。

窓も無く、少し怖い。

「朱鳥、ここで消毒して?」

楓摩に教えてもらい、手を洗って消毒をする。

楓摩も、いつもはしないマスクを着けて、少し不思議な感じ。

「よし、じゃあ、入って。」

楓摩に促され、恐る恐る病室に入る。

なにこれ、全然普通の病室じゃないじゃん……

ベッドの周りにはビニールの壁みたいなのがあっていて、それ越しには人と話せないみたい。

トイレも、洗面台も、全てが病室の中にある。

それに…面会できるって言ってたけど、その面会もガラス越し。

ガラス越しにインターホンを使わないとできないんだ。

「これからは、俺たちも必要最低限以外、このビニールの外にいないといけないんだ。少し、寂しいと思うけど頑張れる?」

目に涙が溜まってくる。

怖いよ……

こんな部屋で独りぼっちなの?

嫌だよ………

「朱鳥、ごめんね。寂しいよね。一週間頑張って、結果が前よりも良くなってたら、退院はできなくても、普通の病室に戻れるからさ。朱鳥は今、病気のせいで体が弱ってきてるの。それに、初めての治療だから、一気に体が弱って他の病気になっちゃったら怖いでしょ?だから、一週間、まずは、一緒に頑張ろ?俺も来れる時は来るからさ。」

コクン

楓摩が、楓摩がいるなら怖くない。

そう、思えた。

思えた…けど……

体が震えてきて言うことを聞かない。

やっぱり…ムリ…………だよ……
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