ある雪の降る日私は運命の恋をする
腕に痛みを感じて目が覚めた。

あれ?ここは?病院?

痛みを感じた腕を見ると、点滴の針が抜けていて、血が出ていた。

……点滴?

あれ、私、入院してるの?

え…嫌って言ったのに…………

楓摩もいないし……

腕の痛みと、嘘をつかれた嫌な気持ちと、楓摩がいない寂しさで涙が出てきた。

「……グスッ…………ヒック…」

「あれ?朱鳥ちゃん、目、覚めた?」

そう言って顔を覗かせたのは…

「…グスッ………陽向……せんせ?」

「朱鳥ちゃん、おはよ。どうした?泣いちゃってるけど」

「……楓摩…は?」

「あぁ、楓摩ね。ちょっと待っててね、今呼んでくるから。」

しばらくすると、ドアが開いて、楓摩が来た。

「朱鳥、おはよ。どうした?泣いてるけど?」

「……グスッ…入院………やだって言ったぁ……」

「え?入院してないよ?あぁ、勘違いしちゃったかな?んーと、朱鳥、車の中で寝ちゃって、起こしたんだけど起きなかったから、診察室で寝かせてたんだけど、他の患者さんが来ちゃったから、一旦、病室に移しただけだよ。朱鳥が起きたら帰るつもりだったんだ。ごめんね。」

「……びっくりした…………」

「ごめんごめん。」

そう言うと楓摩は、ハハッと笑った。

「…あと、手……痛い」

「ん?点滴?あ、外れかけちゃってるね、ちょっと待って、帰るからちゃんと外してあげるね。」

そういって、楓摩は、パパッと処置をしてくれた。

「はい、おっけー。じゃあ、帰る前に1回、熱計って?」

「うん」

ピピピピピッ♪ピピピピピッ♪

「あれ?解熱剤、効いてないな……むしろ上がってる。」

「え……じゃあ、入院?」

不安になって、涙目になる。

「んー、やっぱり帰りたいよね?」

コクン

「じゃあ、家に帰る前にもう1回解熱剤入れるなら、帰れるかな。できる?」

「…………注射?」

「うん、そうかな。」

「…………する…」

「うん、偉いね。じゃあ、持ってくるからちょっと待ってて。」

そう言うと、楓摩は小走りで病室から出ていった。

本当は、注射なんて嫌いだから嫌だけど、入院するのはもっと嫌だから我慢する。

少しすると楓摩が戻ってきた。

「じゃあ、注射するから、腕出してくれる?」

「…………うん…」

「すぐ終わらせてやるから。ちょっとだけ我慢だよ。」

怖くて、心拍数が上がる。

駆血帯を巻かれ、消毒をされる。

この、消毒のヒンヤリとした感じが、余計に緊張するんだよね。

「じゃあ、少しチクッとするよ。」

ギュッと目を瞑っていると、腕に鋭い痛みが走った。

「……痛ったぃ…………」

「もうちょっとだからね。我慢して。」

注射は、針を刺される時より薬を入れられる時の方が痛いんだよね……

「…………ん…まだ?」

「はい、終わり。よく、頑張ったね。これで、帰れるからね。」

楓摩は、笑って、頭をクシャっと撫でてくれた。

それから、用意をして、やっと楓摩と家に帰えることができた。
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