ある雪の降る日私は運命の恋をする
「ふぅー……」

長い手術が終わり、時刻は午後4時。

医局で休憩していると、陽向がコーヒーを入れて持ってきてくれた。

「楓摩、お疲れ様。朝から走りっぱなしで疲れただろ。」

「あぁ、大変だったよ。でも、無事に手術も終わったし良かった。」

「そうだな。救急の方も落ち着いたみたいだし、死者は出なかったって。良かったな。」

本当に良かった。

あんな大事故だったのに、死者1人出ないで、みんな無事。

未だに意識が戻らない人は居るが、心肺停止の患者さんはいない。

とりあえず、一段落だな。

「じゃあ、俺はさっきの男の子の術後の経過見に行ってくる。何かあったら教えて。」

「りょーかい。」

ICUに行って、患者の経過を見に行く。

意識は多分、まだ戻って無いだろう。

ICUに入ってベッドへ向かうと、すすり泣く声が聞こえた。

「……グスッ…………悠馬…よく………頑張ったね…グスッ……ごめんね…守れなくて……グスッ」

そこには、悠馬くんの手を握り、涙を流しているお母さんの姿があった。

「お母様、こんにちは。この度、悠馬くんの手術を担当した清水です。」

「……あ、先生。手術ありがとうございました。…グスッ……すみません、こんなに泣いちゃって…グスッ」

「いえ、大丈夫ですよ。そのまま、悠馬くんの傍に居てあげてください。きっと、その方が悠馬くんも目を覚ました時に安心すると思いますよ。」

「…ありがとうございます。本当にありがとうございます。……グスッ」

悠馬くんのお母さんは、目を赤くして沢山泣いていた。

「いえいえ、ご無事で何よりです。では、僕は少し経過を診させてもらいますね。」

バイタルなどを確認していき、カルテに記入する。

「うん、大丈夫そうですね。では、僕はこれで。また、後で来ます。お母様も、少し休憩なさってください。ここは、常にスタッフがいるので大丈夫ですから。」

「……はい、そうします。」

そう言って、俺は医局に戻った。
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