ある雪の降る日私は運命の恋をする
治療が終わって、今日は比較的に自由に出来る日。

私は、病室に居ても、する事がないので、私が入院している小児科病棟のプレイルームに来ていた。

プレイルームには、小さい子は沢山いたけど、私くらいの年の子はあまり居なかった。

しょうがなく、窓辺の所で本を読む事にした。

「こんにちは」

突然、声をかけられたことに驚く。

「あ、ごめん。驚かせちゃったかな?私、愛依。楸 愛依(ひさぎ めい)だよ!年、同じくらいの子が珍しくて声掛けちゃった。あなたは?」

「あ、私は、前苑朱鳥です。年齢は16歳で、えっと、よろしくお願いします。」

「アハっ、そんなに硬くならないでよ!!それに、私たち同い年だよ?だから、全然タメでおっけー。よろしくね!」

「うん、よろしくね」

初めて、病院内で、友達(?)ができた。

私は、相手から声を掛けてくれるのが嬉しくて、思わず微笑んだ。

「あ、朱鳥ちゃんの笑顔可愛い~!」

「えっ、いや、そんな事ないよっ!!愛依ちゃんの方が可愛いし、元気で……ん、と…その………あ、憧れるっ!!」

「アハっ、ありがと。そういえば、朱鳥ちゃんは何で入院してるの?…あ、答えにくかったら言わなくてもいいけど。」

「えっと…なんていうか………愛依ちゃんは?」

白血病って答えて、変に同情されるのも嫌だったし、気を使わせるのも嫌だったから、なんとなく、そう返してしまった。

「え?あたし?あたしは病気だよ。心臓のびょーき。生まれつきなんだけどね、なんか手術?しないと、死んじゃうんだって……って、言っても全然実感湧かないんだけどね」

「……そっか。私も病気だよ。私は、白血病なんだって。治療も、一旦昨日、終わったばっかりなんだ。」

「えっ、それって出てきていいの?病室で安静とかじゃないの?」

「そうなのかな?私、聞かないできたから、わかんないや。後で、怒られるかも(笑)」

「アハっ、そっかー!私もよく怒られるよ!早く寝なさい、とか、病室から抜け出すな!とか。」

「アハハ、愛依ちゃん元気なんだね!私なんて、ずっと寝たまんまだもん。なんか、すぐ熱出しちゃってさ。」

愛依ちゃんと喋っていると、元気になれた。

愛依ちゃんは、私より入院生活が長いらしくて、まだ私は、あんまり詳しくない病院の事を詳しく教えてくれた。

愛依ちゃんの担当の先生は、陽向先生らしく、その話もしてくれた。

そして、話は恋バナになった。

「朱鳥ちゃんは、好きな人とかいるの?」

「え、あっ………///」

「あ~!!居るんだ!!誰っ?」

「な、内緒っ!!それより、愛依ちゃんの好きな人は?」

「えっ、私!?……私は…………///…先生、なんだけどね/////」

「え~誰?教えてっ!!」

「…朱鳥ちゃんだから、特別だよ?」

"特別"という言葉が嬉しくて、つい、思いっきり頷いてしまう。

「あのね、私の好きな人は……」

そう言って、耳打ちで教えられたのは……

"楓摩先生なの……/////"

「え……」

「驚いた?私、一目惚れだったの。楓摩先生、すっごくかっこよくない?それに、陽向先生が来れない時は、いっつも優しく対応してくれて、その度に好きになっていくんだ……」

そう語った愛依ちゃんの表情は、とても幸せそうだった。

「そ、そっか……」

「うん、だから、楓摩先生の担当の朱鳥ちゃんが羨ましいな~!!」

楓摩と、私が付き合ってるって知ったら…私、嫌われちゃうかな……

せっかく、できた友達なのに……

私、どうしよう…………

「ん?朱鳥ちゃん、大丈夫?具合悪い?」

「えっ、いや、そうじゃな……」

「あっ!朱鳥、こんな所にいたっ!」

楓摩……

愛依ちゃんには、悪いけど少しだけ助かった。

「朱鳥、病室に居ないから、びっくりしたんだよ。あれ、朱鳥、愛依ちゃんと仲良くなったの?」

「う、うん」

「へぇ~、良かったじゃん。あ、そういえば、陽向が愛依ちゃんの事探してたよ?検査、サボったんだって?ダメでしょ?検査は、必要なものなんだから。ほら、早く行かないと陽向、怒ってたよ?」

「はーい……。じゃあね、朱鳥ちゃん!!またね!!」

「バイバイ」

そう言うと、愛依ちゃんは急いでプレイルームから出ていった。

「朱鳥、そんなに愛依ちゃんと仲良くなったの?」

「うん……」

「そっか、良かった。俺、愛依ちゃんの笑顔見たの久しぶりだからさ。」

「え……」

楓摩の言った事に驚く。

「愛依ちゃんはね、心臓に病気があるんだ。それに、もうすぐ手術があるんだけど、それはやりたくないって言っててね…。それで、最近は全然笑っていなかったんだ。たまに、病室に行ってもずっと布団の中で泣いてたんだよ。」

「そうなんだ……」

「まあ、こんな所で長話してる訳にもいかないから、病室戻るよー。今日は許してやるけど、今度からは俺に言ってからじゃないと、ダメだからね?わかった?」

「はーい」

そう言って、楓摩と病室へ戻る。

病室へ戻っている途中、愛依ちゃんの声が聞こえた。

病室のドアが少しだけ開いていて、中の様子が見えた。

「嫌だ!!…絶対にやらない!!怖いんだもん!!」

愛依ちゃんは、ずっと大声で泣いていて、陽向先生も悲しそうな表情を浮かべていた。

「…朱鳥?あぁ、愛依ちゃんね……。今日、心臓のカテーテル検査ってのがあって、手術するには必要なんだけど、愛依ちゃんあれ、苦手なんだよね。」

「…………楓摩」

「ん?なぁに?」

「あ……いや、なんでもない。」

愛依ちゃんを見ていると心が痛くなった。

「俺、ちょっと心配だから様子見てくるね。陽向だけじゃ手に負えないみたいだから。朱鳥は、先に病室戻ってて。」

そう言って楓摩は、愛依ちゃんの病室へと、向かって行った。

私は、しばらくその場で様子を伺っていた。

声は聞こえなかったが、愛依ちゃんは、楓摩が行くと、少し落ち着いた様子で、陽向先生も、助かった様子だった。

愛依ちゃん、本当に楓摩の事、好きなんだな……

楓摩が戻って来そうだったので、私は急いで病室に戻った。
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