ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side3

昨日、朱鳥は愛依ちゃんと仲良くなったらしい。

でも、朱鳥は何故か昨日から浮かない顔だ。

どうしたの?

って、理由を聞いても、教えてくれない。

本当にどうしたんだろう。

そんな事を考えていると、いつの間にか朱鳥の病室まで着いていた。

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ー、おはよー」

「おはよ、楓摩。」

朱鳥は、すでに起きていた。

今日は、朝の回診が終わったらすぐに骨髄検査がある。

この前もそうだったけど、嫌な事は先に終わらせておいた方がいいと思って、この時間に処置室を予約しておいた。

「朱鳥、今日は、診察したら、すぐ検査だからね。」

「えっ、もう?」

「うん。だって、嫌な事は最初に終わらせた方が楽じゃん?」

「そうだけど……」

朱鳥は、少しだけ凹んでいる。

「大丈夫。すぐに終わらせるから。だから、ほら診察させて?」

「ん……」

朱鳥は、素直に診察をさせてくれた。

「よし、おっけー。じゃあ、検査するから処置室行くよ。」

「………………」

「ほら、朱鳥、早くして?どうしたの?」

「…楓摩、抱っこ…………」

「ん?抱っこ?いいよ。おいで。」

朱鳥は、今にも泣きそうな表情で俺に抱きついてきた。

俺は、朱鳥を抱っこして、処置室へ向かう。

朱鳥、骨髄検査嫌いだもんね…

そんなに、痛いんだな……

朱鳥にとっての辛い事は俺もしたくないけど、治療のためならしょうがない。

そう、心を鬼にする。

「朱鳥、処置室着いたよ。ベッドに下ろすから、上の服脱いで、横になって寝てね。」

コクン

今日は、陽向ではなく瀬川くんが助手に入ってくれている。

朱鳥は、不安そうな顔でベッドに寝っ転がって待っている。

準備をパパッと済ませ、朱鳥の所へ行く。

「じゃあ、朱鳥、これから検査するから、横になって、自分のおへそ見てくれる?」

コクン

「朱鳥ちゃん、布掛けるねー」

瀬川くんが、穴の開いたシーツを朱鳥に掛ける。

「朱鳥、消毒してから、麻酔刺すよ。危ないから動かないでね。瀬川くん、手、握っててあげて。」

「はい。」

朱鳥は、小刻みにプルプルと震えている。

背中に触ると、ビクッと大きく震えた。

「朱鳥、大丈夫だからね。力抜いてて。じゃあ、刺すよ。少し痛いけど、我慢してね。」

麻酔の注射を打つ。

「いっ!!」

「もうちょっと、だから頑張ってー!」

2、3本注射を打って麻酔は終わり。

「よし、麻酔は終わり。朱鳥、大丈夫?痛い所ない?」

コクン

「うん。じゃあ、次は本番ね。あと、少しだから頑張ろうね!」

コクン

「じゃあ、朱鳥ー、針刺すよ。麻酔してるから、痛くないからね。でも、少しだけグリグリするから気持ち悪いよ。」

皮膚に針を刺して、それを骨の中まで進めていく。

「よし、じゃあ、最後、5秒だけ頑張ろっか。いち、にの、さんで髄液抜くからね。痛いけど頑張ってね。じゃあ、行くよ、いち、にの……」

「待って!!」

「え?」

「ちょっとだけ、待って…………心の準備が……」

「じゃあ、5秒だけ待つよ。」

5秒数えていると、その間に朱鳥は、深呼吸をしたりして、自分を落ち着かせていた。

「5秒経ったよ。じゃあ、今からやるね。行くよ?いち、にの、さんっ!」

「っ!!!!…痛ぃっ!!やぁ…………もぅ、止めてっ…」

朱鳥は、泣きながらそう、訴えるが、それに応えることはできない。

「あと少し!!」

「はぁ、はぁ……痛いよぉ…………」

痛い、痛いと叫ぶ朱鳥。

経った5秒間の短い間ではあるが、そうとう痛いらしい。

「よしっ、終わり!!止血の為のガーゼはるから、ちょっと待っててね。」

止血のガーゼを貼ってから、朱鳥を仰向きで処置室のベッドに寝かせる。

朱鳥は、必死に涙を拭いていた。

「朱鳥、頑張ったね、偉かったよ。」

そう言って、朱鳥の頭を撫でる。

「グスッ……ふぅま…………痛かったぁ…グスッ……」

「ごめんね」

朱鳥は、顔をグシャグシャにさせて、泣いている。

瀬川くんは、朱鳥にハンカチを貸してくれて、朱鳥それで、目元を拭いていた。

止血が終わって病室に戻っても、朱鳥はまだグズグズ泣いている。

「朱鳥ー、泣かないで?ごめんってば。」

「ん……」

そう言いながらもまだ泣いている。

「どうしたの?」

念のために熱を計ってみる。

朝は熱、なかったんだけどな……

ピピピピピッ♪ピピピピピッ♪

38.5

「あー、熱、上がっちゃったんだね。それで、ちょっとグズってたんだ。今、解熱剤持ってきてあげるから待ってて」

そう言って、病室を出ようとすると

白衣の裾を掴まれた。

「嫌……1人にしないで…………」

「わかった。じゃあ、ナースコール押すね。」

ナースコールで、解熱剤と冷えピタと保冷剤を頼むと、すぐに看護師さんが持ってきてくれた。

「朱鳥、少しチクって、するからね。」

解熱剤を打って、冷えピタを貼ってあげると、冷たくて気持ちよくなったのか、そのまま朱鳥は眠りについた。
< 201 / 505 >

この作品をシェア

pagetop