ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side2

朱鳥が愛依ちゃんの病室に行きたいと言うので、許可を出して車椅子を貸して、俺は自分の仕事に向かった。

用事があって、たまたま愛依ちゃんの病室の前を通りかかった時、愛依ちゃんの声が聞こえた。

「ごめん。出てって。」

ハッキリとそう、言っていた。

それから、俺はしばらくナースステーションで仕事をしていたら、ナースステーションの前を涙を流しながら朱鳥が通っていった。

俺の事は気付いていないみたいだ。

朱鳥、愛依ちゃんと喧嘩でもしたのかな?

少し、心配になったので、俺は仕事を一段落してから朱鳥の病室へ向かった。

朱鳥の事だから、きっとまだ布団の中で泣いているような気がしたので、そっと病室のドアを開けて、中に入った。

案の定、布団の中から朱鳥のすすり泣く声が聞こえる。

「朱鳥、大丈夫?」

そっと声をかける。

「…………ふぅま…」

か細い声朱鳥の声。

「朱鳥、大丈夫?布団の中だったら空気薄くて苦しくなっちゃうから、顔だして?」

「……ん」

朱鳥は、布団から少しだけ顔を出した。

涙の後がいっぱいで、目が赤くなっている。

「朱鳥、大丈夫?」

コクン

「愛依ちゃんと、喧嘩したの?」

そう言うと、朱鳥の顔が少しだけ強ばったのがわかった。

「喧嘩しちゃったの?」

「…………そうじゃない…けど……そんな感じ………」

「そっか。」

朱鳥の場合、こういう時は何も言わないであげるのがいい。

そう思ったから、そっと朱鳥の頭を撫でた。

「……楓摩…………ギュ…して」

「ん?ギューして欲しいの?いいよ。おいで。」

そう言うと、朱鳥はゆっくり体を起こして、抱きついてきた。

だから、俺もギューって抱き返して、そのまま、朱鳥が泣き止むまで、頭を撫でてていた。
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