ある雪の降る日私は運命の恋をする
本を読み終わり、ふと顔をあげた時、窓が視界に入った。

もう春なんだ……

窓の外には満開の桜が咲いていた。

そういえば、入院してもう何週間経ったんだろう……

多分、1ヶ月以上外に出ていない。

私、いつ外に出られるのかな……

いつ退院出来るのかな……

ていうか、退院出来るのかな……

退院…出来るよね…?

外に出られるよね……?

私、病気治るよね…………?

気付くと、いつの間にか涙が出ていた。

「グスッ……ヒック…………」

大丈夫。

きっと、大丈夫。

きっと、退院出来るから。

外に出られるから。

大丈夫。

私には楓摩がついている。

楓摩がきっと治してくれる。

大丈夫……

そう、一生懸命自分に言い聞かせる。

だけど、涙は止まらない。

涙を拭っても拭っても止まらない。

ずっと泣いていると、ドアがノックされた。

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ちゃん、やっほーって泣いてるの?大丈夫?どうした?」

「…グスッ……陽向先生…………ヒック」

「どうした?具合悪い?」

ウウン

首を横に振る。

「どうしたの?」

「……グスッ…なんでも……ない…………」

「そっか。話しにくいかな?でも、もうすぐ楓摩来ると思うけど、楓摩来た時、朱鳥ちゃんが泣いてたらビックリしちゃうよ?だから泣き止みな?」

コクン

「大丈夫。大丈夫。」

コクン

陽向先生は背中を摩ってくれる。

落ち着いて深呼吸をしていると、だんだん涙が出なくなってきた。

でも、顔には涙の跡がいっぱい……

「朱鳥ちゃん、大丈夫?泣き止んだ?」

コクン

「うん。じゃあ、ちょっと待ってて。目、腫れてるから冷たいタオル持ってくるね。」

コクン

陽向先生が病室から出ていった後、また寂しさや不安が込み上げてきた。

でも、泣いちゃダメ。

大丈夫だから。

大丈夫。

自分に言い聞かせるように、大きく深呼吸をする。

そうすると、少しだけ落ち着く事ができた。

それでも、まだ少し寂しい気持ちがあるから、イルカの抱き枕をギューっと抱きしめる。

そして、不安から逃れるようにギュッと目を瞑る。

ガラッ

「朱鳥ちゃん、持ってきたよー」

私は、そっと目を開ける。

「これで、顔拭きな?冷たくて気持ちいいよ」

コクン

陽向先生から冷たいタオルを受け取り目に当てる。

冷たい……

その後、頬や瞼も拭いてかなりスッキリした。

「朱鳥ちゃん、もう大丈夫みたいだね!!じゃあ、朱鳥ちゃんが泣いてた事は楓摩に内緒ね!!」

そう言って、陽向先生は口元に指を当ててシーッと言った。

思わず笑みがこぼれる。

「ハハッ、じゃあ、俺は楓摩にヤキモチ焼かれるから、もう戻るね!!じゃあね!!」

そう言って、陽向先生は元気よく手を振って病室を出ていった。
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