ある雪の降る日私は運命の恋をする
解熱剤と冷えピタそれと保冷剤をもってまた朱鳥の病室へ向かう。

時刻は午後4時。

そんな時間に暇なのか?

と言われれば、暇じゃない。

だけど、医局での仕事は残業すれば何とかなるから、放っておける。

でも、目の前に辛そうにしている人が居るのに放っておくわけにはいかない。

だから、小走りで朱鳥の病室へ向かって、少しでも朱鳥を楽にさせてあげたい。

ガラッ

朱鳥が眠っているかもしれないので、そっと病室に入る。

でも、朱鳥は眠っていなかった。

目を開けて、さっきと変わらず天井を眺めている。

「朱鳥、冷えピタ持ってきたよ。あと、解熱剤も持ってきたから注射させて?」

コクン

朱鳥の細い腕に針を刺す。

朱鳥は、表情一つ変えずに、ただ天井を眺めているばかりだ。

注射が終わって、次は冷えピタを貼る。

そして、保冷剤を当てて、できるだけ体を冷やすようにした。

俺が、それをしている時も、朱鳥の表情は変わらない。

本格的に意識が朦朧としているようだ。

「朱鳥、大丈夫?」

コクン

質問には頷いてくれるけど、それも怪しい。

「朱鳥、もう寝な?」

コクン

「起きてる?」

コクン

「朱鳥?」

コクン

…やっぱり。

頷いているけど、それは質問が来たら頷いているだけで、きっと、わかっていない。

取りあえず、朱鳥の体を休める事が第1なので、朱鳥を寝かしつけることにした。

数分間朱鳥の瞼の上に手を乗せていると、いつの間にか朱鳥は眠っていた。

朱鳥が眠ったのを見て、少し診察をする。

聴診をすると、少しだけ呼吸が浅かったので一応酸素マスクを付けておくことにした。

それから俺はまた病室を出た。
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