ある雪の降る日私は運命の恋をする
そっと病室から出て医局へ向かう。

最初はPHSで陽向に連絡をしようと思ったが、時間も時間なので、陽向ももしかすると、仮眠を採っているかもしれない。

まぁ、医局にいたら、ちょっとヘルプしてもらおう。

そう思って医局に入る。

陽向は、医局のデスクで睡魔と格闘しながら英語の医学書を読んでいた。

そっと陽向の肩を叩く。

「陽向、おーい、起きてるかー?」

「…ん、あぁ、楓摩か……どした?」

「今、時間大丈夫?」

「あぁ、俺なら暇だけど。」

「良かった。…あのさ、さっき、朱鳥が起きちゃったみたいでナースコールあったんだけど、朱鳥、熱41.8もあって、解熱剤打ちたいと思ったんだけど、ヘルプ頼める?」

「あー。いいよ。」

「ありがと。」

そう言うと、陽向はデスクに置いてあったコーヒーをひとのみして立ち上がった。

陽向と解熱剤を取ってから朱鳥の病室へ向かう。

本当は、陽向を呼ばなくても出来るんだけど、もし、朱鳥が途中で起きてしまったら、俺ひとりでは対処しきれないから、陽向にヘルプを頼んだ。

ガラッ

「…やぁっ………グスッ…ヒック……やめてぇ…」

病室に入ると朱鳥は、寝ながらも涙を流し叫んでいた。

「あー、悪夢見ちゃってるっぽいな。楓摩、大丈夫か?この状態で解熱剤打てる?」

「んー、少し厳しいけど…陽向、固定頼める?」

「おう、わかった。」

そっと、朱鳥に近寄って、陽向に固定をしてもらう。

朱鳥は、叫んではいるが、寝ているためあまり動いていない。

今回は、朱鳥が寝ているから、お尻にする事もできないため肩に注射を打つ。

そっと消毒をして、針を刺す。

どうか、動かないでくれよ……

そう願いながら注射を打つ。

まず1本目。

次は2本目。

2本目も同じようにそっと打つ。

「……よし。おっけー。陽向、ありがと。」

「おう。朱鳥ちゃん、熱高そうだし辛いな……。感染症か?」

「うーん?俺もその疑いを考えて、今日検査したんだ。だから、明日になれば結果は出てると思う。」

「そっか。朱鳥ちゃん、頑張れよ!じゃ、俺は医局に戻るな」

そう言うと、陽向はそっと病室を出ていった。

朱鳥は、まだ、寝ながら涙を流している。

俺はそれから、朱鳥と手を繋ぎ朱鳥が目覚めるまでそこに居る事にした。
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