ある雪の降る日私は運命の恋をする
目を覚ますと、目の前に気持ちよさそうに眠っている楓摩の顔があった。

「…楓摩ー、おはよー」

「…………ん…」

「起きなくていいのー?朝だよー」

楓摩の手を取って、少し強めにギュッと握る。

「……ん?…朱鳥?あれ?もう朝?……おはよー」

楓摩は、寝ぼけた顔で眠そうに目を擦っている。

「…って、まだ朝6時じゃん。もう少し寝かせてー」

そう言うと、楓摩は私の手をギュッと握って、またウトウトとし始めた。

でも、私はもう、すっかり目が覚めちゃったので、楓摩が寝ちゃったら暇になる……

だから、少しだけワガママを言ってみる。

「……ふーまー」

「…なぁにー?」

「早く、この病室から出たい~」

「…大丈夫だよー、今日の内に出られるから……」

「……むぅ…今がいいのー」

「え~、俺眠いー。」

「じゃあ、病室移動してから寝よ?ね?」

そう言ってしばらく駄々をこねていると、楓摩も諦めたような顔をした。

「んもう。しょうがないなぁ……病室はもう、用意してあるから静かに移動するんだよ?」

「うん!!」

荷物を持って、意気揚々に立ち上がる。

楓摩も眠そうな目を擦って、ゆっくり立ち上がった。

でも、私が元気そうなのを見てか、久しぶりにビニールから出た私の頭をポンポンして、ニコッと笑ってくれた。

楓摩と手を繋いで病室を出る。

朝の病棟は、みんな寝ているためか静まり返っていた。

新しい病室に着くと、私はもうワクワクとした気持ちしかなくて、自然と笑顔になっていた。

「ねっ!!楓摩!!」

「ん?なに?」

「ギュッして!!」

「ギュッ?いいよ。いくらでもしてあげる。一週間以上出来なかったもんな~」

そう言って楓摩は、私の事をギューッと抱きしめてくれた。

温かい……

楓摩の体温や心臓の音が全部伝わってくる。

安心する。

私は、気付いたら、何故か涙を流していた。

楓摩の服に顔を埋めて、楓摩の服が濡れちゃうのもお構い無しに泣いた。

楓摩は、抱きしめながら、そっと背中をさすってくれていた。
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