ある雪の降る日私は運命の恋をする
朱鳥が眠った後、俺はそっと病室を出て医局に戻った。

医局に入り、コーヒーを入れて、デスクに置いてある資料を取ってから、医局内のソファーに座った。

大きくため息をついてから資料に目を落とす。

そういう時に限って、あいつはいつもやってくる。

「お、楓摩が珍しくため息なんかついてる~」

「うるせ……別にいいだろ。」

「どーしたんだよ。」

「………………」

なんて答えていいかわからず、俺は黙り込む。

ただ、朱鳥が辛い過去の記憶から解放されずに、毎日悪夢に魘されているのを見ているのが辛い。

そして、その原因を作った朱鳥の親戚のおじさんとやらに、とても腹が立つ。

今、出会ったら殴りかかってしまいそうな程の怒りをおぼえている。

なんで、自分より小さい子にあんな酷い言葉や暴力を浴びせられるのか。

なんで、朱鳥の心に傷を負わせるほど、朱鳥を傷つけたのか。

なんで、周囲や警察は気付かなかったのだろうか。

周囲や警察は本当に気付いていなかったのか?

そんな事あるはずないだろ?

頭の中を色々な感情が飛び交う。

「……楓摩、ごめんな、無闇に聞かない方が良かったよな。…ごめん。言いたくなかったら言わなくてもいいから。」

「…いや、こっちこそごめん。……ちょっと一人にさせてくれ。」

「わかった。…でも、なんか悩みあるなら相談しろよ?」

「うん。ありがとう。」

そう言うと、陽向は俺の頭にポンっと手を置いてから自分のデスクに戻っていった。
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