ある雪の降る日私は運命の恋をする
1時間目の終わりのチャイムが聞こえた。

私は、いろいろ悩んで、結局教室に戻る事にした。

教室に戻ると、みんなの目線が痛い。

SHRと1時間目をサボった事もあって、さらに睨まれている気がする。

席に座ると、女の子たちが3人私の方に来た。

明らかに私を睨んでいる。

「ねーねー」

「…はい」

「なんで、SHRと1時間目休んだわけ?昨日 望花(みか)から聞いたけど、あんた本当は元気なんでしょ?なのに、病弱な振りして休んでんの?」

「……違います…………」

「あ?」

思わず俯いて黙り込む。

「ねぇ、目障りなんだけど。みんな、必死で勉強頑張ってんの。そうしないと、楽しい事もできないから。だけど、その中にあんたみたいなやる気の無い人が居ると邪魔なの。」

「………………」

「いーよね。天才だか、なんだか知らないけど、楽しんでばっかりで、それでも成績はキープですか?そーゆーの腹立つんだよね。」

「違っ……」

「何が違うの?だって、実際そうでしょ?あんたは、休んでおきながら彼氏なんて作っちゃって、楽しんでたんでしょ?こっちは、テストとか模試とかで必死なの。だって、これで結果を取らないとこの学校では、すぐに留年になっちゃうから。なのに、なんであんたは……」

「やめろよ。うるせぇ」

えっ……

私は驚いて顔を上げる。

今まで私に散々言ってきた女の子たちも驚いている。

声をかけてきたのは、隣の席の男の子だった。

「なっ、なによ。碧流(へきる)くんには関係ないでしょっ」

「関係なくねーよ。こっちは、お前らがうるさくて困ってんだ。やるなら、他の所でやってくれ。」

「なっ……」

そこまで言っておいて、その女の子たちは諦めたように自分の席に戻っていった。

「なぁ」

「は、はいっ」

突然、声をかけられて、また驚く。

「あんた、名前は?」

「えっ……」

「だから、名前教えろって言ってんの。わかんない?」

「あ、はい。私は、前苑朱鳥です」

「前苑?」

「はい」

隣の男の子は、眠そうな目で私をジッと見てくる。

「ん。俺、瀬川。瀬川碧流。呼び方は碧流でいい。まぁ、自己紹介はこんくらいで。あんた、ドMなの?」

「は?」

唐突の毒舌発言に驚く。

「ドMでもなきゃ、あんな言われっぱなし耐えられないでしょ。なんで、言い返さないわけ?」

「えっと…それは…………」

「俺が、聞いてた分には、あいつらは、お前がズル休みでもしてるように言ってるけど、別に違うんでしょ?兄貴も言ってたし。」

兄貴……?

「…あの……」

「ん?」

「兄貴って……、瀬川先生…ですか?」

「ん?あぁ、そーだけど?兄貴、お前に伝えてなかったの?」

コクン

「ふーん。あぁ、そーだよ、兄貴は星翔。職業は医者。ついでに、お前と面識あるみたいだな。」

いきなり、声をかけられたと思ったら、瀬川先生の弟さんなんだ。

どうりで、雰囲気が似てる。

「……てか、話ズレてるんですけど。」

「あっ、ほんとだ」

「プッ……ハハッ。お前、おもしれーな。まぁ、言い返さなかったのも、どうせ言い返すのが怖かった、とかそんなんだろ?でも、せっかく学校来れてんなら、もっと楽しめばいーじゃん。な?」

「………………」

私だって……

「私だって楽しみたい。そー思ってんだろ?」

「えっ」

突然、心を読まれたような言葉にビックリする。

「お前、考えてる事顔に出すぎ。てかさ、楽しみたいなら、楽しめばいーんだって。楽しむも楽しまないのも、全部お前の気持ち次第なんだぞ?楽しみたいなら笑ってればいい。たとえ、何を言われても、そんなのほっとけ。」

そう言って、ニカッと笑った碧流くん。

その顔は、瀬川先生や、陽向先生、楓摩の笑った時の雰囲気に似ていた。
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