ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side2

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ーおはよー!」

「あ、楓摩!おはよ!」

朝の回診の時間。

いつも通り楓摩がやってきた。

でも……

「朱鳥ちゃん、おはよー!」

なぜか、その後ろには知らない先生がいて……

「ごめんね、朝から騒がしい奴で。朱鳥、紹介するね。佐伯 陽向先生。俺の友達だよ。だから、怖がらなくても……」

「イヤッ!」

体の震えが止まらない。

男の人……

怖い。

怖い。

怖い。

「あすかー?大丈夫だよ、この人は朱鳥を傷つけたりしないから。ね?大丈夫。」

そういって手を握ってくれる楓摩。

少しだけ安心して、震えが収まってくる。

「朱鳥。怖い?」

私はコクっと頷いた。

「なにが怖い?大丈夫だよ、この人は絶対に朱鳥を傷つけないから。」

「ほ、ほんと……?」

「うん。嘘じゃない。」

楓摩がそう言うから、チラッと顔を見てみる。

その人はニコニコと笑っていた。

こんなに、拒絶されたら普通の人ならいやがるに違いない。

少なくとも、前に預けられてた親戚の人なら殴られていた。

この人はいい人なのかな……?

「朱鳥ちゃん」

ふいに名前を呼ばれ、ビクッとなってしまう。

でも、楓摩が手を握ってくれてるから大丈夫。

楓摩は嘘をつかない。

だから大丈夫。

そう、自分に言い聞かせる。

「おはよう!俺は佐伯陽向です!よろしくね!」

ニコッと笑いかけてくる。

楓摩に目線を送ると、楓摩もニコッと笑ってくれる。

この人なら……大丈夫かな…?

「ほら、ね?大丈夫でしょ?」

コクっと頷く。

「じゃあ、握手しよっか?ほら、よろしくねっていう事でさ!」

その人は、私に近ずいてくる。

大丈夫、この人はいい人。

怖くない。

「これから、よろしくね!」

そういって手を差し出してくれる。

恐る恐る、手を伸ばして握ってみる。

少しだけビクッとなってしまったが、なんとか大丈夫のようだ。

「よかった!朱鳥、『よろしくね』は?」

「よ、よろしくお願い……します…」

少しだけ語尾が小さくなってしまったけど、なんとか言えた。

楓摩も、陽向先生もそれを見て笑ってくれる。

楓摩は、私の頭をなでなでしてくれてから、じゃあ回診するね。と言って部屋に私たち2人だけにしてくれた。
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