ある雪の降る日私は運命の恋をする
「うぅ……ヒック…やだぁ…………やめて……」

病室に戻ってくると、朱鳥が泣いていて俺は朱鳥のことを抱っこして、泣き止ませようとしている。

だけど、高い熱のせいで夢現な状態なのか、朱鳥は一向に泣き止んでくれない。

それに朱鳥は、赤ちゃんの様に俺にギューッと抱きついて離してくれないから、点滴をしようとしても出来ない。

「ゲホッ…ゴホッ……ゴホッゴホッ………」

それに、肺炎だから咳も出てるし、泣くから余計に辛そうだ。

「朱鳥ー、大丈夫だよ。落ち着いて。泣き止も?」

そう言っても、朱鳥には届いていないのか、朱鳥は泣き続ける。

「うぅ…………やだぁ…やめてっ……もうやだっ…………」

そう言って、ずっと泣いたまま。

この後、俺も仕事があるから、出来るだけ早く落ち着かせたいんだけど……

仕方なく、PHSで陽向に連絡を入れる。

"もしもし"

「もしもーし、陽向?」

"楓摩?どうした?"

「あのさ、今、朱鳥が泣いちゃってて、どうしても泣き止まないんだ。それで、今手が離せないんだけど、もし大丈夫だったら、安定剤の注射お願い出来る?」

"ん。わかった。すぐ行く"

陽向との電話を切り、朱鳥に声をかける。

「朱鳥、泣かないで?どうした?嫌な夢みた?」

「ヒック……グスッ…やぁ…………やなの…うぅ……」

ずっとこの様子。

声をかけても、ずっと"嫌"とか"やめて"とかしか言わないで泣いている。

俺も、困り果てて結局、朱鳥を抱っこしてるだけ。

コンコンッ

ガラッ

「楓摩ー、持ってきたよ。」

「陽向。ありがと。じゃあ、俺抑えてるからお願いできる?」

「ん。りょーかい」

俺が朱鳥のことを抑えて、陽向に注射を打ってもらう。

「朱鳥ちゃん、少しチクッとするからねー」

「んんっ!!…やだっ……グスッ…ゲホッ…ゴホッ」

注射を打ち終わり、俺はまた、朱鳥をなだめようとする。

「朱鳥ちゃん、結構泣いてるな…。」

「うん……。」

俺は黙って、朱鳥の背中をさする。

「……ぅ…………グスッ…」

「朱鳥、もう大丈夫だよ。嫌な事ないからね。じゃあ、お熱高いからベッドで寝よっか。」

そう言って、ベッドに下ろそうとしても、くっ付いて離れてくれない。

……なんか、前にもこんな事あったな。

仕方なく、一緒にベッドに入って朱鳥を寝かせる。

「大丈夫……大丈夫……」

そう言って、朱鳥の頭を撫でていると、いつの間にか朱鳥は寝てしまっていた。

そっと、ベッドから出て朱鳥の腕に解熱剤と肺炎の薬の点滴を打つ。

「楓摩、大変だな。お疲れ様。」

「確かに疲れたけど、まぁ1番辛いのは朱鳥だからな。これくらい何ともないよ。」

「そっか」

そう言って俺たちは、病室を出て医局へ向かった。
< 332 / 505 >

この作品をシェア

pagetop