ある雪の降る日私は運命の恋をする
夜20:00頃

PHSで楓摩から目が覚めたと連絡があって、病室へ向かった。

コンコンッ

ガラッ

「よぉ、起きたー?」

そう言いながら病室に入ると、楓摩はベッドにもたれかかって座っていた。

「おはよ……」

「おはよ。体調はどう?」

「…まあまあ……」

「そっか。1回、診察してもいい?」

コクン

昨日よりは、体調は良さそうだが、一昨日まで見れていた、楓摩の笑顔は無かった。

ただ、無表情でどこか遠くを見ていた。

「うん、OK。これなら、体調は問題ない…けど、どうする?」

「……何が?」

「明日も仕事休むか?体調は戻ったけど、今の楓摩見てたら、すぐに逆戻りしそうだからさ。」

「…………大丈夫。」

「そう?」

「…うん。これ以上休んで、みんなに迷惑かける訳にはいかないから。」

「そっか。」

俺は、それから、しばらく黙って楓摩の隣に座っていた。

こうして、黙っていれば、楓摩が何か話してくれるんじゃないか…そんな期待をしてた。

だけど、楓摩は何分しても話してくれる気配すら無かった。

すると、楓摩は突然、無言のまま涙を流し始めた。

「ちょ、楓摩、大丈夫!?」

俺も、突然の事で驚いてしまう。

「……大丈夫…ごめん…………」

そう言って、そのまま楓摩は涙を流し続けた。

俺は、黙って楓摩の背中をさすり続けた。

すると、少ししてから楓摩は泣きながら口を開いた。

「…グスッ…………ひ…なた……」

「ん?どうした?」

「……お…………れさ…どうすれば………いぃ?…みんなに……迷惑はかけられないけど…グスッ……正直…………辛いょ…」

「うん…」

「………なんでもないのに…泣いちゃって……これじゃ、患者さんに心配されちゃう………グスッ…朱鳥とも……顔、あわせられないよ…………」

「うん。」

それから、俺はまた、楓摩が泣き止むまで楓摩の背中をさすり続けた。

そして、楓摩が泣き止んでから、そっと楓摩に声をかけた。

「楓摩」

「……ん?」

「明日さ、そんなに辛いなら、休んでもいいんだぞ?俺らは、いつも楓摩に助けてもらってるし、それにいつも楓摩は、人1倍働いてるから、2日くらい休んでも大丈夫。俺らがなんとかするから。……だからさ、お前は一旦仕事の事考えるのやめて、ゆっくり休みな。好きな事考えて、好きな事しな?辛かったら、いくらでも泣いていいから。…そしたら、きっと……いつもみたいに、笑えるようになるから。…………な?」

そう言って、俺は楓摩の頭を撫でた。

コクン

そう、頷いて楓摩は、また少し涙を流した。

「…ありがとう」
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