ある雪の降る日私は運命の恋をする
次に目覚めたのは、いつも通り副作用の吐き気だった。

いつも、治療の1日目はこれで目が覚める。

その後、熱が上がっていって辛くなる。

もう、何回もやっていると、その流れがわかってきた。

辛くなるのをわかっていて、止められない。

それがどんなに虚しい事か……

ただただ耐えるしかない。

楓摩や、看護師さんに言えば吐き気止めや解熱剤などの薬を入れてくれるけど、それも気休めに過ぎない。

吐き気止めを入れても、いずれまた吐き気はくる。

それに、吐き気止めの薬が効く前に寝ちゃうし。

それなら、痛い思いをして薬を入れられるより、耐えた方がいい。

そう思い、私は1度ベッドを上げてベッドによし掛かりながら、いつでも吐けるように桶を用意した。

吐き気と共に襲ってくる悪寒。

病室の中は暑いのに、体は寒くて鳥肌がたつ。

寒いから、布団を肩までかける。

でも、今度は部屋の中の暑さで布団も暑くて布団を剥がす。

すると、また寒気が襲ってくる。

暑寒い…というか、気持ち悪い感じ。

イルカの人形をギューッと抱きしめて、辛さに耐える。

寒さからか、体も震えている。

それに、こんなに辛いのは久しぶりで、うっすらと涙も滲んできた。

吐き気はするのに、吐くことも出来ない。

ひたすら、気持ち悪いだけ……

その時

コンコンッ

「朱鳥ー、入るよー」

ガラッ

「わっ、朱鳥、大丈夫!?」

楓摩は、驚いたように、私の方に走ってきた。

「…ふぅ……ま…………」

「副作用来た?…今回は来るの早かったね………辛いな。」

そう言って、私の手を取る。

「今回は、手なら握っても大丈夫だから。こうしてよ?前回よりは辛くないとは思うけど、それでも辛いよな…。」

そう言って、楓摩は、私の手を少しだけ強く握る。

「顔、真っ青だけど、どうした?吐き気?」

コクン

「そっか……。吐き気なら、吐き気止め入れる?点滴、持ってこようか?」

そう聞かれたけど、私は首を横に振った。

「薬入れなくても大丈夫?」

コクン

「おっけー。わかった。じゃあ、安静にして寝てよっか。」

コクン

そう言うと、楓摩はニッコリ笑って私の手を撫でてくれた。

「本当なら、頭撫でてあげたいけど、できないから、これで勘弁してね」

そう言って、寒さで震えている私の手を撫で続けてくれる。

「頑張れ……頑張れ……」

楓摩のその言葉を聞きながら、私は目を瞑った。
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