ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side2

布団の中にうずくまって震えている朱鳥。

それに、布団の中からは嗚咽の混じった泣き声も聞こえる。

明け方、仕事前に少し朱鳥の部屋に寄ると、朱鳥が魘されていた。

心配になって、朱鳥を起こすと、今度は布団に潜ってしまった。

朱鳥にお願いして、少しだけ手を出してもらった。

その手を握って、泣いている朱鳥に優しく声をかけ続けた。

朱鳥は、しばらく泣いていたが30分ほどしてやっと落ち着いたらしく、布団から少しだけ顔を覗かせた。

「朱鳥、おはよ。大丈夫?」

そう言うと、朱鳥は涙で真っ赤に腫らした目でコクンと頷いた。

まだ、その目には微かに怯えが浮かんで見えた。

朱鳥の両手を握って、朱鳥に優しく問いかける。

「朱鳥、怖い夢、見たの?」

……コクン

「…そっか。……また、おじさんの夢?」

そう言うと、朱鳥の顔が少し強ばった。

「怖かったんだね……」

そう言うと、今度は悲しそうな顔になってゆっくりコクンと頷いた。

しばらく2人とも黙っていたが、少ししてから朱鳥が怯えた顔で、俺を見つめてきた。

「…………楓摩…」

「ん?」

「……………………抱っこ……」

朱鳥は、少しだけ申し訳なさそうに俺に言った。

きっと、朱鳥はここが無菌室だから、俺が朱鳥を抱きしめてやれない事をわかっているんだと思う。

だけど、きっとそれでも寂しいから、悲しいから、怖いから……俺に抱っこしてほしいと言ってるんだよな…

朱鳥は、しばらくジッと俺を見つめてたが、少ししてから、俺に背を向けた。

……ごめんね

辛い思いさせて

ごめんね

朱鳥のお願いを聞いてあげられなくて

ごめんね

寂しい思いさせちゃって……
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