ある雪の降る日私は運命の恋をする
ゴツン

鈍い痛みで目が覚める。

ゆっくりと目を開けると、私は床に倒れていた。

…夢ではないみたい

ゆっくりベッドに戻ろうとすると、突然頭の当たりがズキッと痛んだ。

痛んだ当たりをそっと触ってみると、ドロッとした生ぬるいものが触れた。

そっと見てみると、手に真っ赤な血がついていた。

その瞬間、昔の嫌な思い出が頭を過ぎった。

おじさんに殴られて、血が出て、痛みに耐えながら我慢する記憶。

それを少し思い出しただけで、私は怖くなった。

怖くて、体が震えて、過呼吸になる。

「はぁっ…はぁっ……ヒック………はぁっ…はぁっ……」

嫌だ……

嫌だ……

思い出したくない!!

必死の思いでナースコールを押す。

"どうされました?"

「はぁっ…はぁっ……ヒック……はぁっ…」

押したけど、過呼吸のせいで、上手く喋れない。

"前苑さん?大丈夫ですか?"

「はぁっ…はぁっ……」

"ゆっくり呼吸してください。すぐ行きますから。落ち着いてくださいね"

頑張って呼吸を直そうとすればするほど、焦って過呼吸が酷くなる。

少しして、扉が勢いよく開いた。

「朱鳥っ、大丈夫!?」

楓摩……

「どうした?血も出てるじゃん」

楓摩は、私を抱っこして、ベッドに寝かせてくれる。

「大丈夫。大丈夫。落ち着いて。」

楓摩に促されて、ゆっくり呼吸を整えていく。

15分ほどして、やっと落ち着いてきた。

「大丈夫?」

「……うん」

「なら良かった。ベッドから落ちちゃったの?」

コクン

「そっか。ちょっと血も出てるみたいだし、見てもいい?」

コクン

そう言うと、楓摩はニコッと笑ってから私の髪の毛をあげて、傷口を見始めた。

「あー、ちょっと深いかも。パックリいっちゃってる……。それに、頭だから少し心配だな……」

そう言ってから、楓摩は、傷口の所を軽く消毒して、ガーゼを貼ってくれた。

「朱鳥、一旦応急処置はしたけど、頭ぶつけたなら心配だから、少しだけ検査してもいい?すぐに終わるからさ。」

「……痛くない…?」

「うん。検査は、MRI撮るだけだから大丈夫。今から行ける?」

コクン

そう頷くと、楓摩は、私を抱っこして、病室を出た。
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