ある雪の降る日私は運命の恋をする
看護師さんから、受け取った冷えピタと、保冷剤を当ててあげると朱鳥は少しだけ楽になったようにみえた。

朱鳥は、それから1度寝ると言って、目を瞑った。

俺は、ずっと朱鳥の手を握っていた。









「やあっ!!!」

朱鳥が眠ってから、15分。

突然、朱鳥は叫んで目を覚ました。

また、悪夢を見てしまったようだ。

「朱鳥、大丈夫?落ち着いて。」

そう言って、朱鳥の背中をさする。

朱鳥はボロボロと大粒の涙を零し、声を出しながら泣き始めた。

「うぅっ…なんでっ…………なんで、私ばっかり!!…嫌だ……疲れた!!…辛いよぉ…………」

いつもは、弱音を吐かない朱鳥が、弱音を吐き続ける。

あとほんの少しとはいえ、今までとは比べられないほどの辛さに、つい本音が漏れてしまったんだろう。

朱鳥の顔は真っ赤で、熱もまた上がった事がわかる。

でも、この状況じゃ、朱鳥も暴れるだろうし、解熱剤は入れられないかな……

俺は、朱鳥が落ち着くまで、ひたすら朱鳥の背中をさすり続けた。

それから10分ほどして、朱鳥はゆっくりと落ち着きを取り戻していった。

さっきまで、叫んでいた朱鳥は、グッタリとベッドに倒れ、また辛そうにしている。

「朱鳥、大丈夫?」

ウウン

朱鳥は、そう首を横に振った。

これは、朱鳥が本当に辛くてしょうがない時のサイン。

いつも、俺が同じことを聞いているのはそういう事。

本当に辛い時、早く気付いてあげられるように。

きっと、今の状態だったら、解熱剤も受け入れてくれるはず。

俺はまた、ナースコールで看護師さんに解熱剤をお願いした。
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