ある雪の降る日私は運命の恋をする
……眩し…

あれ?もう、朝……?

昨日は、疲れてそのまま寝ちゃったんだっけ……

あぁ…なんか、憂鬱な気分だな……

「おはよー、朱鳥」

「…おはよ、楓摩。」

「元気ないね(苦笑)そりゃ、そっか……いよいよだね。まぁ、とりあえずご飯できたからおいで?冷めちゃうよ?」

「うん、行く。」

嫌な事は考えないようにして、今は、やるべき事をやる。

とりあえず、楓摩が作ってくれた美味しいご飯を食べないと。

「「いただきまーす」」

楓摩は、いつも通りだけど私は、なぜか箸が進まない。

「朱鳥、全然食べてないけど大丈夫?具合悪い?」

「ううん、大丈夫。ちょっと、憂鬱なだけ…ごめんね、食事まで暗くしちゃって……」

「いいよ、そんな事。大丈夫だよ、朱鳥が不安ならいくらでも手を握る。ぎゅってする。だから、大丈夫。俺がついてるから。ね?」

「……うん、ありがと。」

なんとか、ご飯も食べ終わり服を着替える。

楓摩は、私の不安を取り除こうとしてくれてるみたい……

でも、私の緊張は高まるばかり…

「朱鳥、今日は俺と一緒に行こっか。俺は、先に仕事があるけど、外来が始まったら一番最初だから、それまで俺の診察室で少しだけ待っててくれるかな?」

「うん、わかった。じゃあ、準備してくるね。」

「うん。…朱鳥、ちょっとおいで?」

楓摩は、悲しそうな笑顔で手を広げている。

私は、それに甘えるように楓摩の胸に飛び込んだ。

どんな、不安な時でも楓摩の暖かさは私の心を癒してくれる。

「ごめん。俺、ろくに朱鳥を励ますこともできない……。だから、こうやってギュッってする事しかできない。」

「ありがと…楓摩………安心する。……楓摩、このまましばらくギュッってして?」

「うん、もちろん。いいよ……俺も、ずっとギュッってしてたい。」

お互いに腕を回して抱きしめる。

ただそれだけなのに、なぜか心にとても温かいものが宿る。

不安な時の、2人だけの秘密の合図みたいに。

私達はしばらく動かなかった。
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