ヘタレ王子様の裏の顔
「つーか、先輩!!」
突然、私が腰掛けているベッドに身を乗り出して来たかと思えば、今度は真面目な顔になる。
「俺のこと…覚えてないですか…?」
………は?
え、えーと。知ってるもなにも。
「会ったの、はじめてじゃないの?」
「…はぁ、そうっすよね…あれじゃ、覚えてるわけないかぁ」
だらんと力が抜け、またヘタリとベッドに座り込む犬井くん。
シュン、とうなだれる頭に、耳が付いてそうだなぁ。
かわいいなぁ。
思わず、その頭に手を伸ばしてしまう。
「!?…せ、先輩…?な、なにやってるんすか…?」
「ふふ、やっぱり犬井くんの髪、やわらかいね。ふわふわしてる」
いきなり触れてしまった事に、若干の無礼を感じたが、気持ち良さそうに目を細めている犬井くんを見ると、そんな気持ちがなくなった。
ふふ、本当に、犬みたい。