神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
性格が悪そうなほど口が悪い水神様はにやりと意地悪く笑みを浮かべると、
「これで許してやる」
とそっと私を抱き締めた。
ほのかに香るキンモクセイの甘い香り。
心地よく、どこかで感じたことのある匂いと温かさだった。
なぜ私を抱きしめるのか。
なぜこんなにも悲しい顔をするのか。
なぜこんなにも愛おしそうな顔をするのか。
なぜ私は、こんなにも胸が苦しいのか。
「あ‥、」
ゆっくり腕が離れると何だか寂しさのような名残惜しさだけが残った。
急に抱き締めるなんてって止めてよって言おうと思ったのに、言えなかった。
自分自身の心がまるで何かを覚えているかのように、抱き締められることを自然に受け入れていた。
不思議だ。