神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
第四幕 : 水鏡
「だが人は立ち入れん場所」
奏はしゃがみ込み私と目線を同じにした。
ああ、キンモクセイの良い香り。
透き通った水色の瞳は私だけを見つめる。
まるで吸い込まれてしまいそうな程美しかった。
私の髪を優しくなぞる。
「な、にして‥」
「しっ‥少し黙ってろ」
なぞる髪に息をひと吹きかけた奏は私の体を引き寄せたかと思うと
軽く首筋に噛み付いた。
「っ‥!!」
「まじないだ。俺の匂いを付けていれば大丈夫だろう。その印は形代(かたしろ)の代わりをしてくれる」
印?形代?
形代は和紙で人の形を型どった護身用の御守りのようなもの。
身を隠す、そう言う役割もある。
「印って‥、」
鏡を見て見ると、私の首筋には紺色の花のような印が付けられていた。
「彼岸花だ。本堂家の家紋は水仙紋だろ」
私を必死で助けようとしてくれてるんだ。
何だ、私ばっかり期待して顔赤くして馬鹿みたい。