神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
(暗い‥‥)
湖に落ちてそっから私はどうなったっけ?
『愛されたい。私は右京様に愛されたい』
桔梗の声だ。相変わらず綺麗な声だなあ。
『桔梗、もうここには右京はいないの。本堂家をいくら食そうとあなたの心は満たされない』
お母さん‥?
どうやらここは夢のようだ。
『私は1人はもう嫌なのです。この世で1番私が恐怖するものは孤独でございます』
『分かったわ。だけどね、1つだけ約束して欲しいの。私の娘には手を出さないで頂戴』
『香夜様は私を愛してくださいますか?私を1人にはしませんか?』
私のお母さんはゆっくりと頷いた。
お母さんが桔梗に飲み込まれる数時間前の出来事だ。
『分かりました。約束しましょう』
そう言って桔梗は消えた。
お母さんは本堂家が桔梗によって飲み込まれるその運命を自分の命を犠牲にして終わらせたかった。
自身の唯一の娘である私にこれからの新しい本堂家を任せた。
「お母さん‥」
『足りない‥愛されたい‥香夜様では足りない。月夜様が欲しい‥』
それでも桔梗は飽き足らなかった。
桔梗は私を欲しがってる。満たされない心をどうにか満たしたくて、右京の未練が残ったその心は関わりがある本堂家へと向いたんだ。
殺された恨みなんかじゃなかったんだ。
“未練”が桔梗をこの地に縛り付けていたんだ。
「つくよ!!!」
暗闇から懐かしい声が聞こえる。
「つくよ!!!」
ああ、私は戻らなきゃ行けない。
あの懐かしい声の主のそばに行かなきゃ。
好きな人のそばに、
私を呼ぶその声に引っ張られ光のある世界へ向かった。