神恋〜恋に落ちた神と巫女〜
男の子は眠いのかとっくのとうに読み終わった絵本を抱き締めながら私の膝の上で、スースー寝息を立てながら寝ていた。
「月夜、風呂に入って‥‥、」
「あ、奏。えっと、これは」
「ナツ。付いてきて居たのか」
ナツと呼ばれたその男の子を奏は知っているようで。
何だか、もっとずっと前から知っている、そんな口調だった。
「ナツは神様なの?」
「いや、違うな。人でもない」
人でも神様でもない。霊でもない。じゃあこの子は一体‥?
「ナツは忌み子だ。桔梗や右京が生まれるずっと前に生まれた赤子。
要らぬ子、つまり忌み子として生まれたばかりのそいつは捨てられた。
死んでもおかしくは無い状況の寒さの中、息絶えた。」
昔は、子供を育てるのは今以上に難しくて嫌でも捨てなければならないケースが多かったって聞いたことがある。
今は化学技術も医療技術も向上して、かなり住みやすい環境になっているけど。
「だが、心だけはほのかに温かく生きたいと言う願いが強く感じられた」
「奏が育てたの?」
「勝手に付いてきて勝手に育っただけだ」
全部全部、優しい。
懐かしそうに語るその横顔は、大切に育ててきたからか、ふと笑った気がした。