神恋〜恋に落ちた神と巫女〜


ああ、きっと奏は気をそらしたんだ。
私たちが丁度いた所は桔梗のいるあの洞窟前だったから。

なぜだかあの洞窟の前へ来ると身体が小さく震えるんだ。

奏には私が恐怖で震えていた事が分かっていたんだ。


家族を失った元凶である桔梗が住む所。
いつか自分も取り込まれるんじゃないかと言う不安と恐怖。


奏はずっと気付いていたんだ。


安心させようとしてくれてるんだ。


温かい感情が胸いっぱいに包み込む。
私は奏の手をぎゅっと握り返した。


奏は何も言わない。


だけど私の手を握る大きな手のひらは温かくて優しくて心地よくて心の中にある不安や恐怖を徐々に消していってくれた。


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